基礎医学編の続きです。
今回は基礎医学の中でも一番重要と言ってい生理学と病理学です。
よく言われるように正常がわからなかれば異常が分かりません。
その正常な機能を知るために一番重要なものが生理学で、異常になるメカニズムを知るのが病理学です。臨床をやっていても、結局は生理学や病理学に帰ってくるみたいなところがあります。
研修が始まりICUなどをまわると生理学・病理学の重要性をきっと再確認します。
臨床しだしてからだと時間がないため、一から基礎医学を学ぶのはかなりしんどいです。時間のある医学生のうちからしっかりと学んで土台を築いておきましょう。
幸いなことに、臨床にとても重要な生理学と病理学の分野では鉄板の教科書があります。
話は少し飛びますが、これまで “できる” と感じてきた人たちに共通していることは、教科書を購入するときの閾値の低さです。多分皆さんが想像している以上に教科書をポンポン買って読んでいます。
僕も学生時代はお金がないながらも、出せるお金はほとんど教科書に使っていました。
別に僕みたいに教科書にお金を使って貧乏学生をしなさいとは言いませんが、少しでも勉強を頑張りたいのであれば、基礎医学の中では生理学と病理学の教科書だけは購入しておくことをおすすめします。
生理学
『ガイトン生理学』
いきなりド本命の登場です。
「生理学の教科書はどれを買ったらいいかわからない」→ガイトンしかないっしょ。
「ちょっと高いので買うかどうか悩んでます」→買うことで授業料が払えないなど、生活に支障をきたすことがないのであれば買いましょう。友達と数回飲みに行くのを我慢すれば大丈夫な金額です。
と言いたくなるぐらい本書で大丈夫です。
僕の医学生の時は、改訂前の本で白黒で2万円近くもしたものが、改訂されてフルカラーとなり、値段も安くなった上に電子書籍版もついてくるといういたせりつくせり状態です。本当に羨ましい限りです。
ちなみに、前版は上記の通りでしたので、僕は改訂を待ちつつ他の教科書を購入してお茶を濁していたのですが、いつまで経っても改訂されなかったために英語版で購入しました。
Guytonの英語は非常にシンプルなんで読みやすいです。将来USMLEなど海外も視野に入れている人は生理学や病理学から英語の教科書を購入するのが良いかもしれません。
内容は臨床に即しつつ丁寧に説明されています。人間がよくできているのを実感できるものとなっています。特に循環器の項目が有名です。挿入されているシェーマも良いですね。迷ってるのであれば、図書館で試し読みしてみましょう。
さすがに通読するのには厳しい分量かと思うので、授業を受けつつ気になるところを調べながら読み進めていけば良いでしょう。
英語が大丈夫であれば問題集があるので、そちらを解きつつ教科書で確認するという、王道の勉強も可能です。
他の教科書も軒並み1万円近くするのが基礎医学の本です。
お茶を濁した本の中に『ギャノング生理学』があったのですが、こちらは思った以上に分かりにくかったです。文章の丁寧さは『ガイトン生理学』に負けてます。
正直なところ、『ギャノング生理学』を買うぐらいならプラス5千円程度ですので『ガイトン生理学』を買いましょう。その値段分の価値はある本です。
また、勉強する人であれば医者になってからも利用できます。
『コスタンゾ明快生理学』
「『ガイトン生理学』が良いのはわかった。ただ、そこまでは勉強する気はねぇ。」とか、「通読できそうなものが欲しい」という人もいるでしょう。
その人たちにはこちらの『コスタンゾ明快生理学』です。
こちらの原著はアメリカではかなり有名で、USMLEを受ける医学生などはこっちを読むのがおそらくスタンダードです。
内容は名前の通り明快に生理学を語ってくれています。暗記ではなく理解というのを教えてくれます。またガイトンほど突っ込んでいないので、概観しやすいのも良いですね。
医学生の時は『コスタンゾ明快生理学』でしっかりと基礎をつけつつ、『ガイトン生理学』は必要時に図書館などで参照して、医師になってから『ガイトン生理学』を購入するってのも良いかもしれません。
『ガイトン生理学』は分厚すぎて気圧されてしまいますからね。『ガイトン生理学』を購入したものの読まなくなった、となるぐらいなら『コスタンゾ明快生理学』をしっかり勉強する方が何倍もためになります。その辺は自分と相談してみましょう。
ちなみに似たような外観できる生理学の教科書として『生理学テキスト』があります。
例に漏れず僕の時代は前版でしが、こちらはまぁ日本語が分かりにくい本でした。日本人が書いたのかと思うほど日本語を理解するのに苦労しました。
今版のアマゾンでの評判は良いようですが日本語は改善したんでしょうか?購入する人は立ち読みしてから購入してくださいね。
病理学
『ロビンス基礎病理学』
こちらもド本命、なく子も黙るロビンス様です。
よくこの本の評判に出てくるものに「日本語の訳が下手」というものがあります(ありました)が、そちらは全く気にしなくて大丈夫です。
僕が使用していたのは前版ですが、その時点で既にほとんど問題ありませんでした。改訂されるごとに修正されるでしょうから、それが本書のネックになることはもうありません。
本書で何よりもネックとなるのがその値段です。そのお値段、なんと約2万円。高い。マジで高い。医者の僕からみても高い。
丸善出版さん、原著の『Robbins BASIC PATHOLOGY』は1万円ですよ。親本の『Robbins & Cotran PATHOLOGIC BASIS of DISEASE』でも1万5千円ですよ。さすがに高過ぎないですかねぇ。日本の医学のためにももう少しなんとかならないですか。
愚痴が出ましたが、内容は素晴らしいです。特に総論が素晴らしい。人間の正常が崩れていく様が分かります。まさに病態生理です。
僕は医学生の時は総論を10回は読みました。今読み返しても思い出すでしょう。学生時代に勉強しまくってて良かったと思える本です。
洋書全般に言えることなんですが、分厚く見えるのですが、丁寧に書いてあるため思っている以上に読みやすいです。先の『ガイトン生理学』なんかもそうです。別に「分厚い=難しい」では全くないです。
ちなみに英語が読めるのなら2020年の9月に『Robbins ESSENTIAL PATHOLOGY』というのが出版されています。
ページ数がグッと抑えられています。おそらく『Robbins BASIC PATHOLOGY』が分厚くなり過ぎたため、医学生用にもっと読みやすいものを作ったのでしょう。
もしかしたら、こちらも翻訳版がいずれ出るかもしれませんね。