実は基礎医学の参考書紹介はやるかどうか悩んでいました。自分が勉強していた頃からそこそこ時間が経っているためです。
ですが、自分をここまで育ててくれたのは、基礎を学んでいる時間の余裕のある時期に良書に出会い、そららと真剣に格闘したからだと感じています。
なので、勉強を頑張りたいと思っている人に多少なりとも参考になればと思い、間違いを恐れず書くことにしました。
僕は基礎医学の研究者でもなんでもなく、ただの臨床医です。ですので、臨床医の一意見として読んでもらえればと思います。
“おすすめ本” というよりは、「こんな本で勉強したなぁ」の思い出話に近くなると思います。
本屋に行くと、基礎医学のコーナーに自分が学生時代に欲しかった本がよく翻訳・改訂されていて、今の学生がものすごく羨ましいです。
臨床をやっていると、基礎医学の勉強のし直しが必要だなって感じる今日この頃…
基礎医学の教科書
低学年の方も見ていると思うので、軽く基礎医学の教科書の勉強法を。
別にこれは基礎医学だけではないんですが、いきなり分厚い教科書を通読するのはやめてください(おそらくやらんでしょうが)。多分、心が折れます。
各分野に初心者向けのわかりやすくて薄い本があります。まずはそういった本を通読して全体像を掴んでください。看護向けの本を利用するのも良しです。
全体像がわかると、分厚い教科書でも “迷子” にならず読むことができます。
また、読んでいてわからないところがあれば飛ばして大丈夫です。理解力が足りないからわからないのではなく、その部分を理解するためには他の部分の理解が必要だったりするからです。なので、何度か通読する必要が出てくるのです。
また、数度読んだら一度寝かしておきましょう。
医学は基礎も内科・外科もマイナーも全て繋がっています(同じ人間を理解するためのものですから)。
他の分野を勉強してから戻って読んでみると、初めのうちに読んでいたときには見えなかったものが見えてきます。だからこそ、僕は今基礎医学の勉強のし直しが必要だと感じるわけです。
基礎医学の頃は時間があります。この間に自分なりの勉強スタイルを身につけておくと楽になりますよ。
『リッピンコット』シリーズと『標準』シリーズ
両シリーズとも基礎医学は一通り揃っており(僕が学年が上がるにつれて揃い始めたって感じでした)、医学生の中で認知度の高い教科書となっています。
僕はこれらシリーズよりも、他に好きな本があったのであまりこのシリーズにはお世話になりませんでした。
教科書をシリーズで揃えたいのであれば、現状このどちらかから選ぶことになります。
『リッピンコット』シリーズ
リッピンコットシリーズはアメリカの医学部向けに書かれた基礎医学教科書のシリーズです。
基礎医学の分野で、どの教科書にするか悩んだ際はリッピンコットシリーズを選んでおけば無難にすみます。
その中で一番有名なのが生化学の本書です(おそらくシリーズで一番最初に出たため)。僕は生化学の講義で当時指定されていた教科書がこちらだったので購入して読みました。
この生化学は良書だと思いますが、欠点をあげるならリッピンコットシリーズは “帯に短し襷に長し” 感のある本が多いと個人的に思っています。
多くの人にとって通読するには分厚いし、かといって調べものをするには足りません。 “無難” という言葉がしっくりきます。
このシリーズを通読できる人にとってはいいシリーズなんですけどね。
『標準』シリーズ
こちらは日本の出版物です。基礎医学だけでなく、臨床医学もいくつか出版されています。
『標準』シリーズで一番有名なのがこの『標準生理学』ですかね。
概して、ページ数や各ページの文字数を踏まえると、『リッピンコット』シリーズよりも詳しいものが多いです。
僕は『標準』シリーズは分冊になっている組織学の総論の方を買って読みました。前版のハードカバーになっている方です。今は白のソフトカバーに統一されてしましました(前版の方がかっこよかったのに…)。
名前は「標準」となっていますが、これが標準というにはチト分量が多すぎでしょう。通読用というより調べ物用が欲しいのであれば、『リッピンコット』シリーズより本シリーズの方がいいと思います。
分子生物学
『Essential 細胞生物学』
『THE CELL』の弟(妹?)分ですね。3度は通読した記憶がります。
臨床をやっていても、疑問を追っかけていくと結局は分子生物学に行きつきます。
生理学や薬理学にも当然絡んでくるため、医者をやっていると分子生物学を避けるのは難しいんじゃないでしょうか。
この本を勉強するのであれば、生化学が開始する前の一般教養の時期ぐらいですかね。まだまだ医学書の分厚さなどを全く知らない時期です。
個人的にこの本は通読するための本です。量的に全く苦になりません。
低学年の方は、勉強する人にとってこの本は通読の部類に入る本なんだなって感じを受け取ってもらえればと思います。
『細胞の分子生物学』
有名な本ですね。通称「THE CELL」で、先の『Essential 細胞生物学』の兄貴(姉貴?)分です。
年配の先生とかで、「俺の時代はcellを通読したものだ〜」って言ってる人がいるかもしれませんが、昔はもっと薄かった(らしい)ので、今と比較してはいけません。それに昔はもっと医学教育の時間に余裕がありました。
今は医学もずいぶんと細分化され、医師国家試験も難しくなってます。それを無視して単純比較するのは意味がありません。
有名な本ですが、臨床医をやる分には全く必要ありません。上記『Essential 細胞生物学』で十分すぎます。
基礎医学へ進む方は是非時間のある低学年のうちに本書で勉強してください。
解剖生理学
『人体の正常構造と機能』
日本の医学教育にはないのですが、アメリカの教科書とかを見ていると解剖学と生理学がミックスされている本があり、結構メジャーです。
本書は一番それに近いものですね。生化学や免疫学もカバーしています。もちろん有名な本で、同級生にも購入している人はいるでしょう。
医学書の分厚さと値段の高さを教えてくれる非常に良い一冊です笑
僕も本書を購入するときにはかなり勇気がいりました。
分厚さにビビるかもしれませんが、シェーマ( “絵” のことです)があるため各ページの文章量はそこまで多くありません。
あらゆる分野を含んでいるため、各分野の内容はどうしても薄くなってしまいますが、それは仕方ないでしょう。
医師国家試験を受験する頃には、なんやかんや皆さんここに書かれてある内容は大体頭に入ることになります(それに加えて臨床も含まれるわけですから、そう思うと医師国家試験は恐ろしい試験ですね)。
本書を使いこなせるのであれば良書なんですが。