-next stage- ということで、やる気のある医学生で初期研修を少し先取りしたい人たちにおすすめできる参考書を紹介したいと思います。
参考書紹介は、他に「研修医おすすめ本」シリーズがあるのですが、そちらは基本的に初期研修医を対象に考えています。もちろん、ある程度国家試験対策に余裕がある臨床実習生にも参考になりますよ。
今回は医学生向けとはしていますが、現在初期研修医の人たちにもおすすめの本となっています。
『レジデントのための』シリーズ
著者は同じで佐藤弘明先生です。
佐藤先生は「コウメイ塾」というブログを運営されている方ですね。
もともとレジデント向けの本を書く前に看護師さん向けのモニター心電図の本と輸液の本を出していました。
それぞれ「もう少し詳しくしたらレジデント向けの本になるのになぁ」って思っていたのですが、そう思っていたら出版されたのが本書たちです。
今も別の本を執筆中みたいですので、抗菌薬とか辺りもいつか出版されるかもしれません。
『レジデントのための これだけ心電図』
心電図はお好きですか?笑
ちなみに僕は好きです。
まあ、でもほとんどの医学生は心電図は嫌いでしょう笑
そんな人たちの救いになってくれるのが本書です。
心電図が嫌いになる理由として、心電図の本を開くとまず電気生理の話などが書かれているため読む気は失せ、我慢して読んだところでわかるようなわからないような感じのまま話は進み、結局理解できず読むのをやめてしまうという経験が何度もあるためでしょう。
確かに電気生理の話は大事です。でもそれは、本来ある程度読めるようになってからの次のステージです。
大多数の初期研修医にとって、心電図を読む上で何よりも大事なのは、救急外来で緊急性があるか否かを適切に判断できるようになることです。解釈は二の次なんです。
本書はそういったことを念頭に書かれています。
重要なもの、致死的なものをまずは読めるようになることが大事であり、本書はそれに応えてくれるような構成となっています。
見逃してはいけない致死性が高いものから順に学んでいきます。それもパターン暗記がある程度重要だと割り切っています。
もちろん、暗記をするに当たって理解が大切であることに異論はありません。ですが、心電図が苦手な人にとって、それが邪魔をして心電図が読めないぐらいなら、パターン暗記と割り切った方が賢明です。循環器医以外が読めないといけない心電図なんてパターンが限られているからです。VFやpulseless VT以外は基本虚血系の心電図です。
そういった思い切りの良さも良かったのでしょう。amazonでの評価の数と評価から、本書が数多い心電図嫌いの人たちの救いになっていることが読み取れます笑
正直なところ、個人的にはレジデントが「これだけ」というにはやや足りない感があるのですが、心電図は何よりも拒否感をなくすことが大事だと思いますので、まずは本書でそれを達成して欲しいと思います。
救急や循環器系に進まなければこれ以上詳しく心電図を読むことはないでしょうしね。
おすすめの心電図本に関して以下の記事も参考にしてください。
『レジデントのための これだけ輸液』
輸液は医学生時代にあまり(というか、ほとんど?)学ぶことがなかったのに、初期研修医になり病棟担当になると、初日から看護師さんに「輸液のオーダーをお願いします」と言われます。
どうでしょう。みなさんは今いきなり病棟に出て輸液のオーダーができるでしょうか?
それを可能にしてくれるのが本書となります。
こちらも心電図編と同じで、まず必要な知識を優先的に、そして実践的に教えてくれます。
輸液は種類もそうなんですが、速度もオーダーしないといけません。
速度に関しては患者の状態によってオーダーすべき速度がいくらでも変わるためほとんどの参考書では記載がありません。ですが、初期研修医になったばかりでいきなり自分でオーダーをするとなると、ざっくりでもいいので目安がほしいところです。本書はそれに応えてくれ、一応の目安を記載してくれています。
本書を読むことで輸液製剤の大まかな種類の理解と使いわけができるようになると思います。
最近の医師国家試験は輸液の問題もちらほら見かけますが、輸液勉強の基礎にピッタリではないでしょうか。
『Essence for Resident』シリーズ
こちらは、おすすめのマイナー本でもあげた『まとめてみた』シリーズを書いている天沢ヒロ先生のレジデント向けのシリーズです。
天沢先生は医学生のレベルから初期研修医への橋渡しが本当に上手いです。
難しいことを難しく書くのは簡単ですが、難しいことをわかりやすく書いてくれるため、本当にすんなり頭に入ります。
また「他科に進んでもここまでは一般的に知っておこうよ」という姿勢が随所に見られます。
僕も各科で研修しているときはそういう思いで研修しているため、そういった本が好きなのです。
『Essence for Resident』シリーズはかなりおすすめな本が多く、個人的に輸液関連の本も出してくれないかな〜って思ってます。
『わかる抗菌薬』
抗菌薬は今は医師国家試験でも当然のように出題されますね。
僕は抗菌薬もかなり勉強し参考書もたくさん読みました。
知識ゼロの状態から本当にさまざまな本を読んできたのですが、僕が勉強し始めた頃は今ほど抗菌薬関連の本が充実しておらず、本書が出版されるまで抗菌薬の初学者向けのおすすめの参考書って意外となかったんです。
ですが、本書と次の『使いこなす抗菌薬』は自信を持っておすすめします。
こちらの黄色い本書は入門編となっています。
内容としては、グラム陽性菌・陰性菌の分け方といった本当に基礎から始まり、抗菌薬の本格的な使い分けまでは本書は書かれていません。
したがって「微生物学や感染症はしっかりと勉強しました!」って人は、本書は購入しなくても大丈夫です。
ですが基礎はかなり大事です。この辺がわかっていないのに抗菌薬をオーダーするなんてもってのほかです。本書に書いてあることを「そんなことなんてどうでもいいじゃん」って思う人は抗菌薬は使いこなせません。
医師国家試験の勉強法でもそうですが、しっかりとした土台ができれば、あとは枝葉をつけていくだけですので、スムーズに理解できるようになります。
「基礎からきっちりと身につけたい」という人は是非本書を手に取ってみてください。
『使いこなす抗菌薬』
『わかる抗菌薬』の続編ですね。
微生物学や感染症学をある程度しっかりと勉強した自負があるならこちらの本から入っても大丈夫です。
本書から抗菌薬を結構実践的に学んでいきます。
「結構実践的」と書きました。
本書は臨床を意識して作られています。
流石にdoseなどは他の実践書(マニュアル)や薬品情報を調べる必要がありますが、それ以外の大体のことはこの本に書かれてあります。
臨床で高頻度で出くわすであろうことは押さえており、本書1冊でおそらく感染症科以外が対処しなければいけないことは大体できるようになります。
ていうか、この本に書かれてあることがしっかりとできているなら感染症に関してはある程度自信を持って大丈夫だと思います(感染症が苦手な人は本書に書かれてあることをほとんど実践できていません)。
知識ゼロの人が、たった2冊でかなり実践的なことまでカバーできるようになり、著者の凄さが伺えます。
「天沢ヒロ」はペンネームなんでしょうか?『まとめてみた』シリーズといい、一体著者は何者なんでしょうね。個人的にかなり気になります。
本書を大体身につけると、この後さらに発展的な本を読んでもかなりスムーズに内容が理解できるようになります。
本書は抗菌薬のおすすめ本を1冊教えてくださいと言われたら迷わず選択する程かなりおすすめです。
『気になる向精神病薬』
研修医になったら必ず処方するであろう、睡眠薬や抗精神病薬関連の本となっています。
抗菌薬に関しては一昔と違って医師国家試験にも出題されるようになりました。
参考書も随分と出版されたおかげで選択肢が増え、医学生や研修医的にも学んで当然の雰囲気が出てきており、耐性菌なども意識されることが多くなってきました。
しかし、睡眠薬やせん妄に関してはどうでしょうか。
同期などをみると結構テキトーに処方されていたりします。
そう言ったところにメスを入れるのが本書です。
こと睡眠薬や抗精神病薬に関しては、患者さんにせがまれて良かれと思って処方したことが、結果的に患者さんを苦しめる結果になることがあり得ます。
また、結構テキトーに処方される割には薬剤の相互作用などのピットフォールが多いところでもあります。それに救急外来でもover dose の患者さんは頻繁に運ばれてくるため、その時にも必須知識です。
たかが睡眠薬、されど睡眠薬。
たかがせん妄、されどせん妄、です。
個人的に精神科は疾患の遭遇する率からしてメジャーに匹敵するほど大事だと思っています。他科にすすんでもある程度は理解し対処できるようにしておく必要があるでしょう。
こういった頻度の高い疾患にこだわりを持って処方できるとカッコいいですよ。
共感できる方は是非本書を手に取ってみてください。
病棟関連本
研修医になると必ずと言っていいほど病棟一般業務に躓きます。
病棟業務は研修医のメイン業務ですが、今まで講義で散々勉強してきた教科書的な知識は思っている以上に通用しません。実践力が圧倒的に足りないのです。
最初はみんなどうせできないのでそこまで気にしなくてもいいのですが、どうせ身につけなければいけない力です。医師国家試験に余裕が出てきたら手を出してみてはいかがでしょうか。
「研修医おすすめ本」から気になるのを探してみてもいいですが、ここでは医学生でも読めそうなものをピックアップしてみました。
『はじめての内科病棟 ただいま回診中!』
医学生が病棟実習が始まる前に読むのにぴったりな本です。
初めて患者さんを担当する時って、本当に何をしたらいいか分かりません。本当にびっくりするほど分かりません。
病歴を取るのもとりあえず形だけ情報を集める、診察もとりあえず形だけ揃えるって感じになってしまい、結局回診でのプレゼンテーションも要領を得ないものになってしまいます。
本書は疾患を学ぶためのものというより、そういう心構えをしっかりと教えてくれるものです。本来、とても大事なことなんですが、今まで誰も教えてくれなかったことです。今までなんとなく身につけてくれていたことを言葉にしてくれています。
初期研修がはじまる前というより、病棟実習の前に読んでおきたい本です。
良い本です。
『デキレジ』シリーズ
一言で言えば聖路加病院のレジデント研修を垣間見せてくれる本です。
症例に関して会話ベースで話が進むので読みやすく、例えば発熱ひとつとっても色々なことを考えていることがよくわかると思います。
ここまでしっかり考えて行動できている研修医は正直なところ少ないと思いますが、本来であればこういったことをきちんとできるようにするのが研修の目的です。
症例を会話ベースで展開しているため、教科書的な知識に飽きてきた人が、自分が実際に研修しているイメージをしながら読み進めることができ、同じ疾患を勉強していてもまた違った視点が見えてくると思います。
研修のメルクマールとして見てみてください。
『病棟のギモン』
名前の通りの本です笑
病棟に出ると、本当に色んな疑問が次々と湧いてきます。
ただ、それら疑問のうちの結構な数は、やはり毎年毎年同じようなものであり、それらを解決してくれるのが本書となっています。
見た目とは裏腹に結構エビデンス重視でしっかりと書かれた本です。各臓器一通り書かれています。そのためかページ数はそこそこありますが、読みやすいのでそこまで苦労しません。
初期研修をちょっと先取りしたい医学生あたりに程よい内容かと思います。
『セイントとチョプラの内科診療ガイド』
僕自身が臨床実習が始まる時に購入を検討した本です。
結局購入はしなかったのですが、それは僕の時代(2019年卒)にはまだ第2版(2005年出版)であり、内容がやや古いと感じたためです。今回改訂第3版が出版されたので紹介しています。
内容はややカンタン目な病棟マニュアルといった感じです(それでも結構分厚いですが)。語呂合わせなどもあり、暗記を助けてくれます。
いきなり『ワシントンマニュアル』や他の病棟系マニュアルを読んでも全然構わないのですが、初期研修医などにはありがたい実践よりの知識は医学生にとってはただ混乱を生むだけだったりするので、内容的やや優しいと感じたこちらを紹介しています。
将来内科を志望していたり、病棟管理はしっかりできるようになりたい人は検討してみてはいかがでしょうか。
羊土社ドリルシリーズ
羊土社って出版社はご存知でしょうか?『レジデントノート』など、初期研修医向けの本を多く扱っている出版社です。
レベル的に、苦手な科や忘れてしまった科の復習をするのにちょうどいい本が多いです。つまりは、次のステップにうつりたい医学生に程よい本が多いのです。
その羊土社ですが、最近『〜ドリル』なる本を多く出しています。評判が良いのでシリーズ化したのでしょう。僕も抗菌薬のものは買ってやりました。
医師国家試験での勉強でアウトプットは重要だと言いました。これは初期研修になってからも同じで、僕も本を探す際には必ずとっていいほど問題集系も探します。
ここにあげているシリーズは、抗菌薬や栄養など初期研修医になってから必ず必要とするものばかりです。また、最近の医師国家試験でも問われたりする分野ですね。
医師国家試験に少し余裕が出てきた人はやってみてください。
その他
上記以外で役立ちそうな本をここで紹介していきます。
『麻酔科総合講義』
題名が「総合講義」なのに問題集な本書。問題はオリジナルではなく医師国家試験の過去問です。
「真興交易医書出版部」というところから出版されているのですが、僕はこの名前をこの本で初めて知りました。この本もかなりマイナーでしょう。
麻酔科は初期研修が始まってからおそらく研修することになります。そして、麻酔科の知識は救急やICUでも役立つかなり重要なものです。なのに医師国家試験ではかなり扱いが悪いです。
大学での講義以外ではほぼ学ぶことはなく、医師国家試験でも純粋な麻酔科の問題といえば1-2問しか出ないため、ほとんどの人が体系的に勉強したことがないんではないでしょうか。僕自身もそうで、結構苦手意識がありました。
僕は麻酔科の知識は重要だと思ってたので、何か医師国家試験にちょうどいい教材はないかと探し回ってた時に偶然見つけたのが本書です。
300題とありますが、純粋な麻酔科の問題のみに絞るともっと少ないです。また、問題だけではなく麻酔科一般の知識もまとめてくれています。
僕は本書で問題をこなした後、一気に麻酔科の視野が良くなりました。
この本の良さは問題の解説にあります。その問題を臨床から見るとここがおかしいといった感想をそのまま記載してくれてます。問題集なのですが、読み物のように楽しみながら勉強できます。
かなりの良書だと思います。他の科の問題集もこういった解説をつけてくれないかなぁと思ったりします。
麻酔科にも手を出せそうなほど医師国家試験に余裕がある人はぜひ。