臨床実習を活かすために

最近、過去にあげた記事の書き直しを進めているのですが、先日「臨床実習は重要なの?」の記事を書き直していました。

ここにも書いてあるとおり、個人的な意見として、臨床実習は「医師国家試験においては」特に重要ではないと思っています。

ですが、現在大学病院で研修していることもあって医学生と関わる(教える)ことが増え、きちんと臨床実習をしたいと思っている人たちにも応えたいと思い今回はこの記事を書くことにしました。

おすすめ本も少しあげてます。参考にしていただけたらと思います。

大前提

先の記事でも書いたのですが、臨床実習が始まる頃は、大多数の医学生はそもそも「圧倒的に」基本的な医学知識が足りていません

臨床実習は本来応用編であるはずなのですが、ほとんどの人がそのスタートラインにすら立てていない状況です。

大学病院での実習がメインですので、カンファも多く参加することになるかと思いますが、土台の知識が出来ていないとカンファで話している内容はほとんどわからず、ただただ時間を無駄にして終了してしまいます。

また、いくら実習のみをしっかりやったとしても、担当している1-2人の患者さんの疾患だけしか学ぶ機会がありません。

実習している科の医師国家試験対策をしっかりすることは、医師国家試験対策のみならず臨床実習をも有意義なものにもしてくれます

この時期を利用して実習している科の予備校講義なり問題集を解くなりして、医師国家試験対策もしっかり進めていきましょう。

体験する

臨床実習の目的はコレにつきます。

教科書的な知識は本を読めばなんとなくなるんですが、こと手技絡みに関しては見てみないことには始まりません。外科のオペが最たるものですが、循環器内科のカテーテルなどもそうですね。

ですが、気をつけて欲しいのがガムシャラにひたすら長時間見学すればいいってものではないということです。

医学生で手技を見学する際に大事なのは、その手技に習熟することではなく、多くの種類の手技を体験することです

ここは初期研修医などとは違うところですね。初期研修医や特に専攻医になれば、自分でできるようになることが必要となります。実務ですのでできなければ意味がありません。

そうなると、たくさんの種類云々カンヌンではなく、できる手技を増やしていく必要があります。そうなると同じ手技を何度でもみて(そしてやって)、ものにしなくてはなりません。

ですが、医学生では話が変わります。そもそもたかだか1-2週間手技を見ただけでは、はっきり言って何も身につきません。初期研修医になった頃には忘れています。

医学生が臨床実習で手技を体験する意味は、医師国家試験で手技絡みの問題が出た時にイメージしやすくすることと、自分がその科に興味があるか、進む可能性があるか、を感じるためです。なので、質より種類を意識してください。

もしかしたら「どの科に進むかは初期研修で決めるもの」と思われるかもしれません。もちろん初期研修期間中も診療科選択を決める良い期間ではあるのですが、実は思ったよりもそれが難しかったりします。

というのも、初期研修期間中といえどもあくまで仕事なのです。自分があれを見学したい、体験してみたいと思っていても、人手や自分の業務のためうまくいかないなんてザラにあります。

その点、学生は本当に自由です。しかも興味を持ってくれることは先生にとっても嬉しいことですので、最大限配慮してくれます。

また、臨床実習は大学病院がメインで行われますので、ほとんどの科を経験することができ、しかも最新のものを経験できます。ずっと大学病院という環境にいるため慣れてしまっているのですが、コレは実すごく恵まれていることなんです。

市中病院では診療科がそろっていない、人手が足りない、最新のことをやっているわけではない、などがあったりします(もちろん例外もあります)。大学病院という環境を最大限活かしてください。

診察する

これは上記にあげた過去の記事でも触れていることですし、イメージはつきやすいと思うので少しだけ。

診察する力というのは結構ないがしろにされがちなんですが、やはりできる先生ほど大切にしています。ないげない診察で恐ろしいほどたくさんの疾患を除外したり考慮したりしています。生意気ですが診察している姿でできる先生かどうかは大体わかります。

患者さんは本当にいろんなことを教えてくれます。それを身に染みて実感しているからこそ、できる先生ほどそういう診察になるんでしょう。

診察する力なんてものは一朝一夕で身につくものではなく、ましてや学生の臨床実習で身につくものでもありませんが、診察して得られたものが疾患に深くつながっていることを体感することは大切です。そして皆さんならきっと「医療・医学って面白い」と思うはずです。

また、初めての救急外来で何の診察をしていいのかわからない研修医は意外とたくさんいます。自分がそうならないようにするためにも少しずつ型を身につけていきましょう。

目標をつけて学習する

「何を当たり前な」と思われそうですが、大真面目です。

周りの研修医を見ていると、本当に受け身の研修をしています。目標がないため、ただ言われたことをやっている感じです。臨床実習のときから、おそらくそうなんだろうなって感じます。

ローテーションが必須のため興味がない科であれば多少しょうがない気はするのですが、人間、能動的に学習することと受動的に学習することでは、得られるものが天と地ほど違います

臨床実習とローテーション中の初期研修では多少違うでしょうが、それでも、ローテーションをする前にこれを学習しよう、これを見学しよう、などの目標は立ててから実習に臨んでください。

医学生なら医師国家試験が控えているため目標はそれにそったものになるとは思います。「この科の予備校講義を見よう」「ここまで問題集を解こう」でもかまいません。

この時期に目標をたてて行動するというものができないと、その後もだらだらとそういう学習方法になってしまう可能性があります。基本的なことですが恐ろしいぐらい大事です。気を付けてください。

おすすめ参考書

偉そうにつらつら書いてしまいましたが、何度も言うように医師国家試験対策をしっかりすることは、臨床実習を有意義なものにもしてくれます。

そのうえで、臨床実習に役立ちそうな本をあげてみます。さらにその上をめざしたければ参考書紹介から初期研修医向けの本をピックアップしてみてください。

『セイントとチョプラの内科診療ガイド』

自分が学生時代に購入するかで非常に悩んだ本です。悩んだ理由は内容が微妙だからというわけではなく、僕の時代には第2版で内容がやや古いかもと感じたからです。それが今回改訂されていたためお勧めにあげました。

内容はアメリカの総合内科・病棟向けのマニュアルといったものです。なので扱う疾患は少ないです。初期研修医が読むものよりも少し優しいかなと感じるのでここで紹介しています。

監修が徳田安春先生となっていることからもわかるように、総合マインドを持った医師になりたいと考えている人は手に取ってみてはいかがでしょうか。

『身体所見のメカニズム』

僕の臨床実習の時に発売されていたら間違いなく購入したであろう本です。この本も最近発売されたものです。

医学生時代に身体所見の本をいろいろ探した時期があったのですが、大著すぎたりまとまりすぎて内容不足であったり、カラーでなかったりとどれもピンとこず購入を妥協したことがあります。

この本は手に取ってみたとき、「学生時代にこの本が欲しかった!」となりました笑

カラーも非常に綺麗で、考慮すべき疾患や、メカニズム、その所見の有用性などひととおり載っています。

身体所見にもこだわりたい人は実際に手に取ってみてください。

『マクギーのフィジカル診断学』

これは僕も持っています。身体診察本ではいくつか有名な本がありますが、そのうちの一つですね。

学生時代は前版であり、非常に読みにくく購入しなかったのですが、改訂されて非常にみやすいものになりました。

この本の特徴としてはその所見の意味もさることながら、感度・特異度などについても触れられいることです。医学生の時はあまり意識しませんが、疾患の疫学や、その所見の感度・特異度は疾患を rule-in、rule-outする際に非常に役立ちます

扱っている所見はマニアックなものではなく、医学生も病棟に出ればすぐに出会うものばかりです。初期研修医になってからも重宝するはずです。

これはかなりおすすめの1冊です。

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