この辺は学生時代にあまり勉強しないにも関わらず研修が始まると結構いきなり必要だったりします。
「そんなことよりも挿管したい!」って人がいそうですが、挿管するなら人工呼吸器の知識は必須です。挿管するだけしておいて「はい、さようなら」とはいきません。
科によってはそこまで必要としない知識だったりしますが、最低限度は身につけておきましょう。
『こういうことだったのか!! 酸素療法』
酸素療法は研修初日から必要な知識ですが、学生時代に体型的に勉強しなかった人がほとんどでしょう。
そのためか結構テキトーにやっている人を見かけます。
僕もこの本を読んで、ずいぶんあやしい知識のまま酸素を投与していたんだなって反省しました。
生理学の話を織り交ぜながら説明されていて、「なるほど」と感心することが多いです。リクツが理解できるので、何か問題が起こった時の対応も自然と違ってくるはずです。
また、Tピースやベンチュリマスク、ネーザルハイフローなども一通り勉強することができます。っていうか、初期研修医ならここまで理解できたら及第点でしょう。
Tピースやベンチュリマスクは馴染みがない人が多いんじゃないですかね。特にベンチュリマスクは上級医でも誤った使い方をされていることが多々ありますし、そもそも使い方がわからない人も結構います。
酸素療法はどの診療科でも使うため、「使っている=わかっている」と思いがちです。そのためかなおざりにされてます。
そういったものに対して、なあなあにせずきちんと理解して投与できる。カッコいいじゃないですか。
ちょっとしたことにも根拠を持って診療できるようになりたいですね。
『こういうことだったのか!! NPPV』
ネーザルハイフローの登場により不動の地位から外れた感のあるNPPV。
医師国家試験などでも選択肢で出てきますね。選択肢からは選ぶことはできても研修が始まっていきなり自分で使える人はほぼいないでしょう。
酸素療法ほど必須ではありませんが、挿管はしなくて管理できるため利用する科は結構あると思います。
上記『酸素療法』と同じ著者であり、わかりやすく書かれているためサクサク読めます。
またNPPVに関してはフィッティングが大事なんですが(患者さんが付けたくないと思ってしまうと使用できませんしね)、その辺に関しても詳しく説明してくれています。
格闘してきたんですね。「NPPV=フィッティングとの戦いの歴史」というのがわかります。
フィッティングはどうしても軽視しがちだと思いますが、NPPVの効果がイマイチ出ない時、本当に効果がないのかフィッティングが悪いから効果が出ないのかは必ず鑑別にあがります。
挿管せずに管理できるというメリットを活かすためにも、丁寧に学びたいところですね。
このシリーズに共通なんですが、まず一冊目に最適です。
『Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理』
人工呼吸に関しては学生時代からいくつか本を読んできました。その中で結局一番理解が進んだのがこの本です。
著者の田中竜馬先生はICUで有名な先生ですね。
他にも集中治療系の本を何冊か出版されています。生理学を織り交ぜつつ、わかりやく説明されていると評判です。
さてこの本に関してですが、「人工呼吸器のみでこの分量か」と躊躇してしまうかもしれません。
確かにそうです。
ICUの本を読むと呼吸器の項目で必ずといっていいほど人工呼吸器について書かれています(ICUのことを考えれば当然ですが)。それでなんとかしたい気持ちにかられます。
ですが、できればこの本を読んでいただきたい。
僕は人工呼吸器に関して色々な本を読んできました。
ICUの本で人工呼吸器の勉強をしたり、簡単系の本で人工呼吸器の本で勉強したり、マニュアル系で勉強したり etc…
最終的に至った結論は、「急がば回れで、この本からスタートしておけばよかった」です。
分量は多く見えますが、話し言葉で読みやすく、各ページの文章量からもそこまで負担になりません。
呼吸の生理学から入り、病態生理と人工呼吸器の設定を結びつけて学ばせてくれます。なので応用が効きます。結局暗記が少なくてすみます。医学部受験の時から変わらないですね笑
人工呼吸器はAの異常に対応するものです。Aの問題はすなわち即死を意味します。
そういったものを勉強しているのです。結局楽はできないです。
『人工呼吸器レジデントマニュアル』
医学書院から出版されている『レジデントマニュアル』シリーズ。みなさんも一冊ぐらいは持っているんじゃないでしょうか。
その中の人工呼吸器シリーズです。
上でできれば『Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理』を使ってしっかりと学んで欲しいと書きました。
ただ、現実問題として「今まさになんとかしないといけねぇんだよ!あんな本読んでる時間なんてねぇ!」って人もいるでしょう。
本書はその際に役立ちます。
『レジデントマニュアル』シリーズはあくまでマニュアルです。詳しい説明はそこまでありません。一通り勉強したことを前提としているものです。
この本も「何故その設定なのか」はさすがに内容がやや足りないものとなっていますが、そんなことよりもまずは目の前の状況をなんとかしなければならないって人が多いでしょう。それには応えてくれます。
僕は既にさまざまな本で学んだ後に読んだので評価は難しいのですが、知識ゼロを想定して書かれており、それでも一通り理解できるようになっています。
じゃあ『Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理』要らないじゃんと言われそうです。ですが、おそらくこの本だけではきちんとした理解は難しいと思います。
上記2冊は必ずしも趣旨が同じものではないですから、自分に必要なものはどっちかを考えてから比較してみてください。
『人工呼吸に活かす!呼吸生理がわかる、好きになる』『人工呼吸の考えかた』
学生時代に色々な人工呼吸の本を読んだと書きました。その中で役に立った2冊です。参考での紹介です。
両冊とも薄いためあまり時間をかけず通読できます。
『人工呼吸に活かす!呼吸生理がわかる、好きになる』はまさに呼吸生理に関しての本です。先程紹介した『Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理』と同じく田中竜馬先生の著書です。
名前の通り呼吸生理がメインの本ですので人工呼吸器とは違うのですが、ここがわかっていないと人工呼吸器もわかりません。
人工呼吸器の本を読むための準備段階の本ですね。
羊土社の本ということもあり、病態生理を重視して勉強したい医学生にもおすすめです。
『人工呼吸の考えかた』を読んだときに初めて人工呼吸に関して少し「できるかも」って気がしました。こちらも呼吸生理から始まり、原理・理屈を重視しています。
人工呼吸器を扱ううえでの基礎づくりにピッタリの本という感じです。
上記『Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理』が多すぎるという方に合うのではないでしょうか。
『こういうことだったのか!! ECMO・PCPS』
またまた『こういうことだったのか!!』シリーズからのおすすめです。
わかりやすいので仕方ないんです笑
COVID-19により知名度が上がったECMOですが、さすがにECMOが必要とされる科は限られているでしょう。
医師全員が詳しく学ぶ必要があるかと言われれば疑問です。
ですが、必須の救急外来でECMOを利用するERCP症例の話が出るかもしれません。またICUでも当然出会うことになります(病院にその設備があれば、の話ですが)。
「なにそれ?」でもやっていけるっちゃあやっていけるのですが(恥ずかしながら僕も1年目の途中までは全く知りませんでした)、浅いながらも知っている方が楽しいはずです。
他の『こういうことだったのか!!』シリーズ同様、難しい話をわかりやすく説明してくれ、初学者の1冊目にピッタリな作りとなっています。
実際に自分で使用する場合には使い慣れた人と共にやるのが間違いなくベストです。それに対して完全に無知のままでは失礼ですので、この本あたりで大筋を理解してから参加しましょう。