今日は地味な本を中心に。検査関連の本と、いわゆるマイナーの本です。
入院中の患者さんは痛い思いをされながら結構な頻度で採血されていますが、皆さんちゃんと採血結果読んでますか?
採血検査は色々ある検査のうちの一つに過ぎませんが、色々なことを教えてくれます。
あんまり知られていませんが専門医の基本領域に臨床検査専門医ってのがあるぐらいです(知ってました?)。
僕は学生時代、選択の臨床実習では臨床検査を選んだのですが、結構面白く奥が深かったのを覚えています。
採血結果からは医師は逃げられません。どうせ逃げられないなら、面白く感じられるようにしましょう!
また、紹介しきれなかったマイナー編の本も紹介します。
検査
『異常値の出るメカニズム』
検査関連の医学書で一番有名であろう本です。
僕は臨床検査での臨床実習で、前版を辞書がわりにして使用していました(まあ、内容からして通読するものでは決してないですね)。前版まではかなり分厚くなっていたですが、第7版の改訂で結構すっきりになりました。
研修してて思うのが、上級医も含めてみなさん結構何も考えずに検査をホイホイ出しています。そしてその検査で思いがけない結果が返ってきてすごい悩んだりしています。わざわざ自分で謎を作り出して、それに悩んでいるわけです。
なぜそういうことが起こるのかというと、検査は完璧ではなく、偽陽性・偽陰性などが存在するからです。
それらを考えてから検査を出さないために、検査結果に振り回されてしまうのです。
本書は検査の方法なども書いているため、なぜそういう異常値が出るのかという原因から検査値を理解できるようになります。
この本で検査のメカニズムをわかってから検査を出すのとそうでないのとでは、かなり臨床能力や疾患の視野の広さに差が出ると思います。
医師である以上検査は必ず出すので、本書でしっかりとその意味を理解して出せるようになりたいですね。
『検査値を読むトレーニング』
『異常値の出るメカニズム』はいくら改訂でスッキリしたとは言え、ほとんどの人はそれでもなかなか重いと感じるでしょう。
そこで本書です。
名前の通りトレーニングです。実践書です
各章毎にテーマがあり、初めにそのテーマの説明をし、その後問題を解くという構成になっています(オーソドックスですね)。
要は、いつもみている患者さんの検査値に解説をつけてくれている訳です。助かるじゃないですか。
トレーニングしながらなので、気張らなくてもサクサク進んでいくと思います。
それなのに気がついたらいつもりも深く検査値が読めるようになる。本当にありがたい限りです。
上記のうちどれか一冊と言われれば、こっちでしょう。
皮膚科
『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』
かなりの良書ですね。
著者の思いが詰まった一冊です。
売るために本を書いたのではなく、書きたいことがありそれが本になってます。
レベル的には皮膚科を勉強する際にまず始めに手に取る本です。
皮膚科医が皮疹を見たときにどういった思考回路を辿って診断しているのかがわかります。
この本を読むと皮疹を見たときに大きな分類分けができるようになるので、下記の本や他の皮膚科の本を読む際にどの項目を探せばいいのかがわかるようになります。
結構サクサク読めるのですが、得るものは多いです。
内科医でも外来で皮疹は診ることも多いですし、内科疾患が皮疹として出現することもあります。
内科医が皮膚科の教養と身に着けるのにピッタリの一冊です。
皮膚科を勉強するにあたっての必需品です。
『診療所で診る皮膚疾患』
参考で紹介する『あたらしい皮膚科学』の方が圧倒的に有名でしょう。
ですが、こちらを是非推したい。
名前に「診療所で診る」とあるように、皮膚科のcommon diseasesの対応の仕方を教えてくれる本です。
いくらローテートの研修となったとはいえ、皮膚科志望以外が皮膚科を選択して研修するってことはほとんどないと思います(僕も研修していません)。
ですが、いざ研修が始まると患者さんは褥瘡をはじめとしてかなりの頻度で皮膚に問題を抱えます。
看護師さんに「せんせぇ、皮膚になんかできものがあります」って結構言われますよね。
全部皮膚科に頼むのもアレですから、ちょっとしたことなら自分で対応したくなるはずです。
そんな時に役立ってくれるのが本書です。
通常の教科書でありがちな、「治療はステロイド」みたいな書き方になっていません。
これって専門にしてない先生からすると結構重要で、治療ステロイドって書かれても「very strongがいいのか、はたまたmediumがいいのか」「ローションがいいのか、軟膏がいいのか」と疑問が尽きません。皮膚科医からすれば語るまでもないことかもしれませんが、本当に悩みます。
ですが、この本ではそこまで詳しく処方の仕方が書いています。しかも患者さんへの説明も書いてくれています。
また、普通であれば病名毎に説明がありますが、そもそも皮膚科医以外だと、ある発赤をみて「むむ、あの病気かな」とはなりません。なので検索に非常に困ります。
それが本書では「手荒れをみてください」みたいなよくある患者さんの訴えごとにも説明があるので、そこから調べることができます。本当に助かります。
類書は他にもありますが、病理などは省いてあり、疾患もマニアックなのは扱っておらず、一番皮膚科医以外に歩み寄っている本だと思います。
かなり役立つ一冊です。この本を持ってるとちょっとした皮膚疾患を自分で治療したくなってきます。おすすめですよ。
『あたらしい皮膚科学』
めちゃくちゃ有名な本ですね。
医学生時代から皮膚科志望と決めていたら購入した人もいるんじゃないでしょうか。
ですが、上記『診療所で診る皮膚疾患』と比べて学問チックですね。
こちらの方がより基礎からしっかりとした知識が身につくのでしょうが、皮膚科医以外だとなかなかオーバーワーク感があります。
整形外科
『整形外科専門医はこう見立てる』
整形外科疾患を持っている患者さんは本当に多いですよね。受け持っている患者さんの中には必ずっていいほどいると思います。
やはりある程度の対応は必要でしょう。
この本はひとことで言うなら整形内科本でしょうか。
症状毎の記載で、診断に至るためのポイントや、必要な検査、治療はもちろんのこと、その症状のred flagや専門医にコンサルトするタイミング、そして患者さんへの説明までが記載されています。
載せてある疾患も非常に頻度の高いものばかりです。
非専門医が全てを読むのは少し多いかなって感じですが、手元にあると重宝すると思います。
『フローチャート整形外科診断』
非専門医向けに書かれている本ですね。
二人の会話ベースで話が進み症状からフローチャートで診断をつけていく感じになっています。鎮痛薬の処方や外固定の仕方なども記載があります。
分量も抑えてあり、こちらは会話ベースってのもあり基本は(少なくとも章ごとは)通読する本ですね。会話ベースのため検索は少ししにくいですが、フローチャートがあるためカバーはできるでしょう。
上記『整形外科専門医はこう見立てる』よりもやや救急寄りの本です。当直である程度整形外科疾患の対応をしなくてはいけない人向けです。
精神科
『メンタルな患者の診かた・手堅い初期治療』
個人的に有病率の高さから精神科はメジャーだと思っています。内科外来をやっていても必ず精神疾患を持った患者さんはやってきます。
つまり、内科医も精神科疾患をある程度対応する力は必須だと考えています。
本書の著者は聖路加病院で内科医としてトレーニングされた後、精神科へ進まれた方です。
内科医が外来で精神科の患者さんを診ることになったら、何に気をつけ、どうすれば良いかを丁寧に教えてくれます。まさに内科医が欲しい情報ですね。
また、紹介するときにこういう情報を載せれば良いよっていうことも記載があり非常に役立ちます。
本文からは著者の人柄が出ているように感じます(本人には出会ったことはないのですが)。とても良い本ですよ。