今回は画像についての参考書です。
皆さんが研修するような大きい病院では、日中ならばおそらく放射線科の先生がいて読影してくれると思いますが、救急の夜間当直時だと放射線科の先生も当直するようなかなり大きい病院でもない限り自分で読影するしかありません。
さすがに研修期間中は研修医のみの判断で患者さんを帰宅させることはないと思いますが、専攻医になるとそうはいきません。
また専攻医になると病棟当直があると思いますが、患者さんは転倒したり腹痛・胸痛を訴えたりするので、「私は救急科に進まないから大丈夫」とも言っていられません。
結局、最低限の内科・外科知識や画像診断は必須になってきます。何でもかんでも他科コンサルトをするわけにもいかないですしね。
たくさんの本を読む必要はないと思いますが、1冊ぐらいは読んでおきましょう。
『フェルソン 読める!胸部X線写真』
入院時にルーティーンで撮られる胸部X線写真。その胸部X線写真の読み方を身につける本です。したがってこの疾患はこう見えるといったようなものではありません。
見え方の原理からしっかり書かれている本格派です。
画像は胸部X線以外もそうですが、読み落としをしないように一定の方法で読むのが重要です。胸部X線はどの診療科に進んでも入院患者さんを担当する以上、絶対読まなくてはなりません。できるだけ早い時期に正しい読み方を身につけたいところです。
研修医おすすめ本で紹介していますが、医学生のうちから読んで身につけるのにいい本です。
『放射線科医のものの見方・考え方』
変なサイズで変な方向から読ませる超本格派のX線本です。
守備範囲は広く、胸部以外にも腹部や腎・泌尿器、骨軟部まで含まれます。しかも解剖や発生学を絡めて説明されています。
本書ではこの疾患ではこう見えるということも書かれており、X線本に関して網羅度では最高峰でしょう。
本書を読むと放射線科医がX線ひとつから恐ろしいほどいろんな病態を考えていることがわかります。正直、僕はこの本をまだまだ読みこなせていません。放射線科医以外でここまでしっかりX線を読めている人はいるんでしょうか。
少しでもこのレベルに達したいですね。内容量から辞書的な使い方も十分可能です。
画像を頑張りたい人はぜひ。
『すぐ役立つ救急のCT・MRI』
何か1冊のみと言われればこの本ですかね。文字通り救急の現場で参考にできる本です。
頭部CTの画像や腹部CTの画像といった部位別の画像診断の本を買うとどうしても頻度の低い疾患の画像まで網羅されているのですが、この本は救急で出会いそうな疾患に絞ってあります。
救急外来の現場って診断まではできないことが多いです。重要なのは、手術が必要なほど重症かどうかであり、その意味ではここに載ってある疾患だけで十分すぎる程です。
救急で出会う疾患を頭部から胸腹部、婦人科、外傷まで網羅されています。
CTだけでなく、必要最低限のMRIまで含まれているのも良いですね。救急外来でMRIが必要な場面って限られていますし。
鑑別疾患のポイントまで書かれているため救急外来では重宝します。なかなか相談しにくい夜間の病棟での初期対応にも使えますね。
救急で使える本をどれか1冊と言われればこの本を勧めます。
『CT読影レポート、この画像どう書く?』
題名の通り、もともとは放射線科の専攻医向けに書かれた本です。が、基本から丁寧に書かれているため、他科の先生でも読影の基本を学ぶのにもってこいです。
「なるほど、その辺を意識して読むのか」って感じることが結構あります。
この本も頭部から泌尿器、血管まで一通り書かれています。
『すぐ役立つ救急のCT・MRI』の、救急外来で参照するという本とはまた趣旨が違った本ですので、両方持っていても損はしないでしょう。
『すぐ役立つ救急のCT・MRI』が詳しすぎて読めないっていうのなら、こちらをおすすめします。
『レジデントのための画像診断の鉄則』
これも上記と似たようなコンセプトの本ですかね。
画像診断の本が欲しい時に何度か比較で立ち読みしたのですが、ちょっと内容が薄い感じがして僕は購入までは至りませんでした。
ただ、人によってはハマる可能性があることと、レジデント向けの画像の本ということで参考程度に紹介しておきます。
『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』
全身ではなくて胸部のみの画像診断の本です。
胸部のみですので全員には勧めにくいかな、と感じたのですが、胸部X線や胸部CTはどの科に進んでも間違いなくオーダーするものですので、ある程度の読影は必要であろうと思いここに記載しました。
“ベストティーチャーに教わる” に名前負けしないほどわかりやすい本です。
原理から入っているのに恐ろしいほどわかりやすく、「なるほどね」と感じつつ原理がわかるので応用も効きます。
分量的に通読も十分可能です。
診断本ではないので、疾患も他科でも出くわすようなもののみの紹介ですのでオーバーワークになることもないでしょう。
胸部画像の本では間違いなくベストです。
『教科書では学べない 胸部画像診断の知恵袋』
こちらも胸部画像のみの診断本です。
先の『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』は原理の説明もあり応用が効く本となっていますが、こちらはその辺がやや軽めになってる印象です。
ただ、何故そのように映るのかはきちんと説明があります。
症例ベースになっており、画像所見の見本もあるため大変参考になります。
僕は『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』を持っていて、それと内容・レベルが被っていたため、立ち読みのみで購入はせず参考での紹介としますが、こちらもかなり良さそうですね。
『やさしイイ胸部画像教室 実践編』
名前の通り上記『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』の実践編です。著者も同じです。
事あるごとにアウトプットの重要性を説いていますが、名著『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』にその姉妹編としてアウトプット本が出たことになります。購入して読みましたが、間違いなく “買い” の一冊です。
構成はシンプルで、100症例の胸部X線がありそれを読影して答え合わせをするというものです。
問題は「何歳かと性別」の情報しかないので、胸部X線画像から診断をつけに行くものではありません(というか、胸部X線はそういった目的のものでもありませんし…)。
解説のページには一貫した読み方で説明がされているので、100症例やっていくうちに自然と順序立てて読めるようになります。そして、読影にはそれが一番重要だったりします。
『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』でインプットしてこの本でアウトプットする。そしてまた『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』へ戻るとより理解が深まる。
臨床をやる上で胸部X線は必ずついてまわります。医学生のうちから読んでもいいものです。
おすすめです。
『レジデントのための腹部画像教室』
体裁・名前からしてわかるように、『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』の腹部版です。
胸部とは違うため書いている先生は違う人なのですが、こちらも何故そういう画像になるのかが書かれており、理解が進みます。
救急外来でなかなか診断がつきにくいのが腹痛です。画像も本当に悩みます。
なぜそういった画像になるのかがわかるため、診断にまで至らなくとも緊急性があるのかないのかがある程度判断できるようになります。
それが研修で一番大事なことですよね。
腹部は考えなければいけない疾患が多いため分量もやや多めですが、持っていても損はない本だと思います。