今回は総合内科系の本を。
初期研修で一番勉強したのが救急や総合内科的な勉強でした。
内科各科の勉強も大事だと思うのですが、初期研修期間中は各科に共通する、医師の土台となる基礎をしっかりと身につけたいと考えていました。それに合致すると考えたのが救急と総合内科だったわけです。
個人的に、その目標を持ち続けて勉強したため多少はマシになれたのかなって感じています。
救急編はすでに書いてるので、今回は総合内科の本で役に立ったものを紹介していきます。
『卒後15年目総合内科医の診断術』
有名な本じゃないでしょうか。僕が学生時代に買った時はver.1の「10年目」だったのですが、ver.2になり名前も「15年目」になりました。
大きく3章に分かれていて、救急外来編、総合内科外来編、入院診療編、となっています。
内容としては、症候から頭の働かせ方や、気をつけなければいけない点などを説明してくれています。特別変わった考え方などを披露している本ではありません。これ一冊で他の総合内科系の本で記載されているような疾患や考え方は一通り学ぶことができます。
よくある症候から怖いものを見逃さないようにする。総合内科らしい本ですね。でもこれが結局一番初期研修期間で大事なところでしょう。そう思って僕も救急や総合内科系の本をメインに勉強してきました。
ただ、救急外来編となっているところも、あくまで総合内科医視点での救急外来って印象があります。
読んでいて、「いやー、流石に救急の現場でそこまではなかなかできないよなー」ってのがちょくちょくあります。まあ、これは僕の経験不足のためかもしれません。僕もいつかそこまで考えて動けるようになりたいなと思う日々です。
個人的な話なんですが、学生時代に読んでいたときは難しく理解できないものが多かったのですが、今読んでみると書いている背景なども理解できるようになっており、「なんだかんだでこの2年で成長してるんだな」と思ったりします。感慨深いです。
臨床力がある著者が15年の医師人生で得た教訓を惜しげもなく披露してくれている本です。
総合内科本をどれか一冊と言われれば本書をおすすめします。
『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』
忘れもしません。自分が大学4年生の春休み(5年生になる直前です)に行った病院見学先で、「この先生、すごく勉強してるなー」って憧れた当時初期研修医2年目の先生に勧められて購入した本です。
当時は第1版で、カラーではなく紙質もあんまり好きではなかったのですが、第2版でカラーとなり紙質も変わって非常に僕好みになりました。
皆さんは自信を持って風邪と診断できているでしょうか。ゴミ箱診断的に風邪と診断してしまっていないでしょうか。
本書で勉強することで、発熱でくる患者さんに言ってしまいそうになる「ただの風邪ですね」を、きちんと根拠を持って風邪と診断できるようになります。
症状を発熱+症候(鼻症状メイン、咳症状メイン etc…)に分類して説明していきます。そしてその中で風邪以外で気をつけるべき疾患なども教えてくれます。the 総合内科って本ですね。
僕は救急外来で発熱できた患者さんは今でもこの本で得た考え方で診ています。おかげで系統だてて診ることができていると思ってます。
また、患者さんへの説明も上手になりました。今のところ患者さんに抗菌薬の投与をしない説明をしたときは問題なく納得していただけています。
風邪は本当にどこの科でも診ることになります。そういったものこそ丁寧にしたいですね。いい本です。
『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』
副題にもあるように診断学の本となります。
学生時代にはあまり気をつけなかった感度・特異度などの疫学を全面に出している本です。
例えば「めまい」の項目を引いてみると、抹消生めまいは〜%、中枢性めまいは〜%と書いてくれています。しかもプライマリケアの場合や救急外来での場合などに分けて記載があります。
救急科の先生が初期研修医と比べて患者さんの対応が速いのは、経験的なものも含めて頭の中にこういった疫学が入っているからです。ですから、次に必要な身体所見や検査がパッと思い浮かぶんですね。
また、身体所見も救急の現場ではプライマリケアとは違い丁寧にできないことも多いです。必要十分で意味のあるものが求められます。そんな時に感度・特異度が有効になってきます。
「この年齢・この症状で来院しているから〜の可能性が高い。だから特異度の高い〜の検査が必要で、ついでに恐い〜の疾患を除外するために感度の高い〜の検査が必要。」と頭が働く訳です。
この本には身体所見の感度・特異度もあるので、診断を詰めていく(除外していく)時に役立ちます。
疫学を活かすとは言うのは簡単で実行するのは恐ろしく難しいです。しかし、感度・特異度などを意識して診察や検査をすることはできる医師になるには必須知識だと言っても過言ではありません。
救急外来でこの本を参照にしつつ少しずつ身につけていきましょう。
『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』
名前の通り内科系の外来で役立つマニュアル本です。こちらも有名な本だと思います。
今の初期研修医1年目からは外来研修が必須となっていますし、その時に一番役立ってくくれるはずです。
また、研修している病院が2次救急だとこの本も結構役に立ちます。結局同じ外来なわけですからね。
症候毎に書かれており、見開きでその症候で鑑別すべき疾患が頻度とともに記載されています。また、これもお馴染みで見逃したくない疾患も一覧で載せてくれています。
臨床をやりだすと疫学は重要なんだなって改めて思うことが多いです。やはりよくある疾患にはよく出会います。
アプローチに関してもフローチャートがあるので、患者さんが入ってくる前にちらっと確認するのにもってこいです。
外来は一番困るでしょう。何せ学生時代に全くやらないからです。その時に本書の存在を思い出してくれたらと思います。
『Hospitalist』
こちらは本じゃなくて雑誌です。
医学雑誌は本当に色々出版されています。初期研修医向けだと初期研修医御用達(?)の羊土社出版『レジデントノート』と、医学出版社からの『レジデント』あたりでしょうか。
『レジデントノート』あたりは増刊号のどれかを買ったことがある人もいるでしょう。救急のおすすめ本で紹介した『Step Beyond Resident』も『レジデントノート』のコラムをまとめて本にしたものです。
ですが、今回紹介するのはそれらではなくて『Hospitalsit』っていう雑誌です。今回紹介しているだけあり、こちらは総合内科向けの内容を取り扱っています。ちなみに総合内科医向けの雑誌は他にもあります。
初期研修医におすすめするなら『レジデントノート』となりそうですが、『レジデントノート』はあまり経験のない初期研修医向けに書かれているため詳しさが物足りないと感じることが結構あります(その分、初学の分野を勉強するときはとっつきやすいんですけどね)。
今回紹介している『Hospitalist』はすでに臨床を経験している先生向けの本ですので、臨床をベースにしてより突っ込んだ内容を記載してくれています。
普段〜ということをやっているが、それにはエビデンスがあるのか、今そのことの先端はどうなっているのか、などを知ることができます。
しかも総合内科向けの雑誌なので専門すぎないところもいいですね。必要十分な情報といった感じです。
僕は定期購読しているわけではありませんので、必要なもののみを購入しています。
みなさんが興味がありそうなものの中で、おすすめできそうなのが『内科エマージェンシー』『総合内科のための集中治療』の2冊です。
「救急や集中治療を少し突っ込んで勉強してみたい」と思っても今まで紹介した例えば『ICU/CCUの薬の使い方, 考え方』などは分厚すぎて読めないって人にちょうど良い分量だと思います。
他にも良書があるので、気になったら探してみてください。