初期研修期間で一番辛い?けど一番得ることが多いであろう救急外来の現場。今回はそんな救急外来での研修をサポートしてくれる本たちを紹介していきます。
初めのうちは救急外来は本当に何もできません。思っている以上に動けません。無力さに愕然とします。そしてテキパキ動いている2年目を見て「すげー」と憧れを抱くものです。
でも安心してください。その2年目も1年目の頃はあなたと同じく何もできませんでした。研修医の通過儀礼です。
かといって、何もできていないことを良しとするのも良くないですね。そんな時に本が役に立ってくれます。
これを読んだら、あなたも立派なデキレジ?!
マニュアル系
『京都ERポケットブック』
患者さんの症状からどういった疾患を考えて、そのためにはどういう風に検査を進めればいいかに焦点を当てた本です。ですから、疾患の各論の記載はないに等しいです。
ERの現場でホットラインが鳴り、上級医に「次は胸痛が来るよー」って言われた際に、
「胸痛の患者さんの時は何に気をつけば良いんだろう」
「この後はどういった検査をしてくのだろう」
といったことに答えてくれます。
「救急外来で次にこんな症状の患者さんがくる」って分かってからその項目をサッと開いて、何に気をつけてどんな検査をすべきかをすぐに確認できるような作りになっています。
救急外来の現場では時間がないですから、こういうパッとみてすぐわかるというのは助かります。
フルカラーでとても見やすいのもgoodです。また、割と余白があるので書き込みも可能です。僕も色々書き込んで自分用のマニュアルにしていきました。
救急外来のマニュアルは本当に色々売られています。
救急系に限らず、マニュアルは評判よりも自分に合ったものを選ぶのが一番ですが、個人的にこの本が必要最低限でかつ一番使い勝手がいいと感じました。
が、最近発売された次に紹介する『当直ハンドブック』が結構良さげで、今後定番が入れ替わる可能性があるかもと感じています(※結局『当直ハンドブック』はバカ売れしたようですね。ただ、目的が違う本ですので、本書と両方持っていてもいいと思います)。
初期研修医の皆さんで、救急用のマニュアルを探している人は、是非『京都ERポケットブック』と『当直ハンドブック』の両方は手に取ってみてください。
『当直ハンドブック』
意外とあるようでなかったかなって感じており、発売が予定されてから結構期待していました。
一言で言うとオールマイティな1冊です。うん、結構いい感じじゃないでしょうか。
作りは本当にオーソドックスで、前半に症候、後半に各論の説明です。が、ER向けで射程範囲は広く、内科系救急から外傷、小児・産婦人科救急まで含まれています。
“研修医になったらまずこの1冊” とあるように研修医にターゲットを絞ってあるのはいいですね。研修医のレベルをきちんと把握しており、やたらと難しいことを書き過ぎていません。
発展的なことは別の本を利用して勉強すれよく、研修医としてやるべきは基礎づくりです。
そして本書はERにおいてその基礎作りにもってこいのレベルとなっています。
必要最低限のスコアの掲載もあり、2色刷りで見やすさも◯です。そして薬剤は商品名での記載もあるという配慮も good。
しかも、これだけオールマイティにしておきながら、白衣に入るサイズにおさまっています。
うん、結構いい感じじゃないでしょうか(2度目)。
救急外来で『当直ハンドブック』、しっかり勉強用に『救急外来 ただいま診断中!』が定番になりそうなポテンシャルを感じます。
※上記は初版が発売されてすぐにレビューしたものですが、実際にかなり売れたようですね。最近ver.2になってます(多少項目が追加されている程度ですのですでに持っている方は追加購入は不必要かと)。
発売当初から売れると思いそういったレビューをしていたので、実際にそうなると自分が書いている本ではないのに嬉しいものですね。
学生時代からたくさんの本を購入してきたため良書かどうかは割と見抜けるようになってきた(と思っている)のですが、参考書レビューのブログを書いている身としては、体裁が保たれてよかったです笑
『当直医マニュアル』
結構有名な本で、毎年改訂されています。そこからも支持されているのがわかりますね。
薬剤(量)などがしっかりと書かれているため、そういった観点からは『京都ERポケットブック』よりも役立ちます。
また疾患の各論もあり、各種スコアなどの掲載も多く、他科へのコンサルトにも役立ちます。そう言った意味でもより実践向きですね。
初期研修期間中だと救急での薬剤投与(特に昇圧剤など)は上級医がやってしまうことも多いですが、専攻医になると救急外来がなくとも病棟当直でその辺まで自力での対応が必要になってきます。その時は大変役立つと思います。
カラーではないのは欠点(個人的に)ですかね。やはり見やすさは上記2冊に劣るかと思います。
しっかりと勉強系
『救急外来 ただいま診断中!』
中外医学社がから出版されている『ただいま診断中』シリーズの救急外来版です。
この本は出版されたばかりの第1刷を書店で立ち読みして「これは良い本だし売れるな」と感じ、すぐ購入したのを覚えています。
案の定、今では研修医が購入する救急系の本の定番になっていますね。
ちなみに『ただいま診断中』はこれ以外にも何冊が出ていますが、値段と内容が釣り合っていないものが多い印象です。
話がそれました。
内容は以下に紹介する『Step Beyond Resident』シリーズを1冊にまとめた感じで、救急外来で出会う症状に対してどのような思考回路を働かせれば良いのかがわかります。
ちなみに、おすすめしておいてこう言うのもなんなんですが、本書は特に目新しいものはありません。会話ベースなのはいくらでも見かけますし、症例の話を絡めていること、また本書で語られている内容もいたって普通です。
いわゆるオーソドックスな本です。ど真ん中ストレートです。何もこの本を読んだから次の日からいきなり救急外来の現場で動けるようになるわけではありません。
正統派な本のため、内容はおそらく思っているよりも難しく感じると思います。僕も学生時代に何度も読み返しましたがピンと来ないことも多々ありました。
ただし、それは理解力云々の問題ではなくて、そもそも救急外来の現場を経験していないからでして、救急外来に何回かでてから出くわした症状を見返すと、「なるほど!」と思うはずです。
愚直にしっかりと学ぶための本書が絶賛されて売れていることはいいことですね。
色々言いましたが、マニュアルとは別に救急外来での思考法を身につけるための本として購入必須と言っていいと思います。
『救急外来, ここだけの話』
先に出版されていた『集中治療, ここだけの話』の姉妹本ですね。
集中治療のものと同様に、今度は救急外来で出会うcontoroversialな項目を集めて説明してくれます。
救急外来をやっていると(というか、他の診療科でもそうですけどね)、「上級医はいつもこうやっているんだけど本当にそれでいいんだろうか」と思う時がやってくると思います。
そういった時に登場するのが本書です。
まあ、診療で皆さんが疑問に思うことは当然他の人たちも疑問に思っているわけで、そういった項目を集めて、過去の論文などを紹介しつつ、実際のところはどうなんだってことを説明してくれています。
頭から通読する本ではなくて、疑問が出た際にその項目を探して解決するための本ですね。痒いところに手が届くって感じです。
なんというか、 “役立つ” 系の本です。
救急外来を初期研修医でこの本まで読んで実践できているのであれば間違いなくデキレジの部類です。そうそう出会うものではありません(なんたって救急外来以外にも学ばなくてはならないことはたくさんありますからね)。
どうせ当直がある間は救急からは逃げられませんので、初期研修期間中はまずはしっかりと基礎をつけて、余裕が出てきたときに本書に手を出すぐらいで大丈夫です。
『Step Beyond Resident』シリーズ
羊土社から出版されている『レジデントノート』の中にあるシリーズをまとめて本にしたものとなっています。
『救急外来 ただいま診断中!』が出版されるまでの、やる気のある研修医の定番の書といった感じですか。
今でももちろん購入する価値のある本ですが、
研修医があまり本を買わなくなったこと
『救急外来 ただいま診断中!』が新たに定番となっていること
シリーズとして7冊あること
改訂が行き届いておらず内容が古くなってきているものがあること
などから前ほどは購入されていないイメージです。
僕は全部購入して読破したんですけどね笑
やっぱり良い本ですね。話言葉なんで意外とサクサク読めます。
著者の林先生は救急科でとても有名な先生ですね。N○Kでも番組をされていたので知っている人も多いのではないでしょうか。
内容が古くなったとはいえ救急外来の基本が大きく変わるわけではないので、本書から学ぶことは多いです。
話言葉なこともあり、本書を読むことで救急外来の現場で有名かつ教育熱心な先生の指導を受けたような気分になれます。
また、林先生は日頃から多くの論文を読まれており、各章の終わりに関連する論文の中から必読論文をあげてくれています。はじめのうちはどの論文が読む価値があるのかはわからないですから、論文集としても非常に役立ちます。
必須とはさすがに言えないですが、今でもデキレジを目指したい人の救急外来のバイブルともいって良いんじゃないかと思います。
『もう困らない 救急・当直』
林先生の本を読んでみたいけど、『レジデントノート』はさすがにちょっと…って人は結構いるんじゃないでしょうか。そういう人たちに本書をおすすめします。
カラーであり、わかりやすくかつ簡潔にまとめてあります。林節も健在でまたclinical pearlも満載となっています。林先生がまとめたノートって感じでしょうか。
おそらくこれ以上まとめすぎるとマニュアルとなってしまうため、これが限界でしょう。
『救急外来 ただいま診断中!』を読みきれない人にもいいかと思います。救急外来アレルギーを克服したいあなたに。
『研修医当直御法度』シリーズ
先ほど紹介した林先生の師匠である寺沢先生の本ですね。
今でこそER型救急をやっている病院は多いですが、それもこれも寺沢先生と林先生のおかげです。
寺沢先生の著書で「ER型救急は最初は他科からの理解がなかなか得られず苦しかった」という旨を読んだ記憶があります。
そいういう熱い思いと行動力を兼ね備えた先生が残してくれた本です。
赤本は少し前の救急のアンチョコ本として有名でした。
今ではER型救急も当たり前となり、またさまざまな本が出版されていることもあってあんまり読んでいる人を見かけないです。でもそれは両先生がしっかりと次へのバトンを渡せたということですよね。
青本は症例集です。先生が失敗談を赤裸々に綴ってくれています。
今も昔も救急で陥るピットフォールなんてそうそう変わりません。この青本で書かれているような症例にきっと救急外来で出会います。
自分がこういった患者さんがきたらどうするか、と臨場感を持って読むときっとためになるはずです。
以下も参考にしていただければと思います。