いきなりですが、心電図はお好きですか?
ちなみに僕は意外と好きです笑
救急外来で心電図をとると読んでみたくなります。
でも初めからそうだったわけではありません。
学生時代から結構心電図の本はそこそこ読んで勉強してきたのですが、その度に打ち負かされてきました。
初期研修が始まってすぐは、救急外来で心電図をとった後に看護師さんに「ほらよっ」って感じで渡されると「マジかよ」って思ってました。
慣れない救急外来の中で心電図を読むなんて余裕はとてもじゃないけどありませんでした。
で、結局上級医にほとんど見てもらってました。
心電図との格闘を続け、研修医1年目が終わる頃ですかね、「ああ、もう大丈夫だ」という感じになり、それ以降は自分から読みたくなるようになった感じです。
このように、心電図を読めるようになるには間違いなく時間と根気が必要です。
例として僕は心電図の本だけで10冊前後は読んできました。ですが、ほとんどの人にとってそこまでの熱量はないでしょう。
ただ、熱量がなくとも救急外来研修を避けて通れない以上、最低限は読めなければいけません。
したがって今回はいつもとは違って目標別に紹介します。自分の目標に合わせて選んでみてください。
初期研修医だけでなく医学生にも参考になると思います。
初級編
対象として考えているのは、国家試験で勉強したがほとんど忘れてしまった人、初期研修期間が終了すれば心電図は入院時ルーティーン以外はほとんど読まない人、心電図は見るだけで嫌な人です。
先にも述べたように、心電図は初期研修期間に救急ローテーションがあるため避けられないです。
上級医にぶん投げるのも一つの手かもしれませんが、もし上級医が近くにいなかったらどうでしょう。上級医を探してる余裕はあるでしょうか。
結局どっちにしろ最低ラインの理解は避けされません。勉強するしかないですね。
心電図が苦手な人は心電図に対するアレルギーをなくし、かつ自分なりに系統だてて読む方法が1つでもあればそれで十分です。
ここで紹介するどの本でも構いません(てか、他の本でも全然構いません)。
1つで十分ですので系統だてた読み方を見つけてください。そして、心電図を少しでも読めるかもと思ってください。
『レジデントのための これだけ心電図』
心電図嫌いの救いになってくれるのが本書です。
心電図嫌いを克服しようと思って心電図の本を開くと、大体の本は電気生理の話などが書かれており、そこでまずやる気を失います。
頑張って読み進めても、わかるようでわからないまま話が進み、結局読むのをやめてしまいます。
確かに電気生理の話は大事です。でもそれはある程度読めるようになってからの次のステージです。
心電図が苦手な人にとって何よりも大切なのが、今目の前にある心電図波形がヤバイのかそうでないのかを知り、正しくビビることです。
本書はそういったことを念頭に書かれています。
見逃したらヤバイ心電図、頻度の高い心電図を中心に説明してくれています。電気生理の話は最低限に絞ってあります。
Amazonでの評価の数と評価から、本書が数多い心電図嫌いの人たちの救いになっていることが読み取れます笑
個人的にはレジデントが「これだけ」というにはやや足りない感があるのですが、初期研修が終了すれば心電図からおさらばする人には「これだけ」で良いのではないでしょうか。
また、初学者にとって心電図はまずは拒否感をなくすことが大事だと思いますので、初学者は本書でそれを達成して欲しいと思います。
『3秒で心電図を読む本』
名前はかなりcatchyですが、きちんとした本です。
山下先生は循環器系の本をたくさん執筆されていますね。わかりやすい本が多いです。
本書はそのなかで、心電図が苦手な人たちになんとか最低限は読めるようにしようという想いから書かれた本です。
『レジデントのための これだけ心電図』がなかった時の心電図嫌いの人の救いの本といったところでしょう。
個性が強い本ではないので大丈夫だと思いますが、『レジデントのための これだけ心電図』が合わない人はこちらを選択すればいいと思います。
さて、この本でどこまで読めるようになるかというと、禅問答のようですが、結局素人が3秒で読める分しか読めるようになりません。
当然です。
循環器内科で何年もやられている先生が3秒で読める分と心電図アレルギーがある人が3秒で読める分には圧倒的な差があります。
それを承知した上で、心電図が苦手な人は本書で勉強してもいいと思います。
本書はなんちゃって本ではなく、しっかりと系統だてて読むような方法を身につけられます。メインの内容は虚血です(重要度から考えて当然ですが)。
何度も言うように、心電図が苦手な人はアレルギーをなくしつつ自分なりに系統だてて読む方法が1つでもあればそれで十分です。てか100点満点です。
分厚い本を手にして読むのを諦めるより、本書で1つの読み方を身につける方が圧倒的に大事です。
『いつでもどこでも心電図判読』
学んだ読み方はやはり実際にアウトプットしないと身につきません。アウトプットは超重要です。
このレベルにあう問題集はないかな〜と書店で探していたら見つけたのが本書です。
立ち読みした限り、医師国家試験レベルの問題が多いですね。一般的に出くわす心電図といった感じです。
実際に読んだわけではないので参考での紹介です。
問題集を探している方の参考になれば。
中級編
『レジデントのための これだけ心電図』でレジデントが「これだけ」というにはやや足りないと言いました。
また、医師国家試験でそこそこ心電図を勉強した人にとって初級編はややもの足りなく感じると思います。
ここではそういった人たちを対象にしています。
このあたりのレベルから不整脈もある程度読める必要が出てきます。
『心電図ハンター』シリーズ
救急編②でも紹介した『骨折ハンター』と同じ著者です。救急科の先生ですね。
医学生時代はどうしても目の前の心電図が読めるかどうかが一番の問題となってきますが、臨床が始まると視点はもっと実践寄りになります。
つまり、この心電図をもとにどうすれば良いのかが大事になってきます。
心電図が嫌いな人はヤバいものを把握し、とりあえずコンサルトできれば十分ですが、できればもう少し考えてコンサルトしたいですね。
研修医になって、救急外来で循環器内科の先生にコンサルトして「こんなんでコンサルトしてんじゃねぇ!」と怒られたり、今度は「なんでもっと早くコンサルトしねぇんだよ!」と怒られたりした経験をした人もいるはず(多分)。
循環器内科の先生は恐い人が多いですからね笑
『骨折ハンター』でもそうですが、『心電図ハンター』でもそういったコンサルトまで含めて今後どう動けばいいのかという視点を持って書かれています。
恐い恐い循環器内科の先生を真夜中でも叩き起こすべきなのか、それとも検査を進めてもう少しコンサルトの根拠を集めるべきなのか…。ん〜、考えただけても冷や汗が出ます笑
心電図を見せられて「どう動きますか?」というスタイルで書かれているので、実践向きでその力が鍛えられます。
既に自分なりに系統だてた読み方が出来上がっている人の次のレベルにちょうど良い本だと思います。『骨折ハンター』もそうでしたが、かなりおすすめです。
『熱血講義!心電図』
こちらは心電図の系統だてた読み方を身につける本です。
杉山先生はたくさんの心電図を書いていますね。僕も杉山先生の別の著書で心電図の基礎を勉強しました(まだこの本は発売されていなかったので)。
杉山先生の考え方として、心電図は判断するmodalityの一つにすぎないというものがあります。
それをもとにして目の前にある心電図をどう読み、どう動くかが書かれています。こちらも実践向きの本ですね。
心電図の型を身につける本というより、ある程度身についた人が読むことで新たな視点や考え方・読み方が身につく本だと思います。
2冊になっている分、上記『心電図ハンター』の方が幅広く扱っていますが、こちらの本もおすすめです。
『心電図のみかた、考え方』
上記で杉山先生の本で基礎を作ったと言いましたが、それがこちらの本です。
読み方を身につける本ですが、初級編よりも突っ込んだ、よりどっしりとした読み方を身につけるための本です。
講義形式で身につけていく感じです。電気生理などにはほとんど触れていません。
不整脈の取り扱いが少し弱いですが、僕は今でもこの時の読み方がベースになっています。
ちなみに、『心電図のはじめかた』『心電図の読み “型” 教えます!』という名前でカラーになって読みやすくなったものも発売されているようですね。
中級編はこのあたりの本の立ち位置が難しいですね。
型を身につけて心電図を読むようになるためには、どこかで重めの本が必要になってきますが、そのために分冊になっている本を使用してまで勉強する熱量があるかどうか(しかも循環器系以外を専攻する人が)。
読み方の本を学んでもすぐに役立つ訳ではないですが、かといって型がある程度固まっていないと、必ず見落としが出てきます。
分冊になりがちな講義系の本で身につけていくのか、無味乾燥になりがちな教科書系の本で身につけていくのか、問題集系でゴリゴリ身につけていくのか…
ここら辺は個人の好みによるところが大きいです。
ちなみに杉山先生は2月にも『すき間!ドリル』という問題集を出すみたいです。そちらもまたレビューできれば。
上級編
循環器系へ進む人や、総合内科や救急科向けの本です。現時点の僕が紹介できるのはこのレベルまでです。
循環器系に進む人の初期研修での最低ラインといったところでしょうか。
循環器系以外に進む人であれば、初期研修期間中にここまで勉強している人はなかなかいないんじゃないでしょうか。そういった人たちにとっては、初期研修医でここまでできれば100点満点だと思ってます。
このレベルになると「右脚ブロックと左脚前枝ブロック、completeの3枝ブロックだね」とか言えるようになります。
このレベルになると、メインはどっちかっていうと不整脈ですかね。心電図を読めるようになってくると、圧倒的に不整脈の方が楽しいです(その分難しいですが)。
あとこのレベルになると、定義やなぜそういった波形になるのかが多少きになり、それらを確認できるような本が手元に欲しくなります。
ここのレベルを超えてくると、さすがに電気生理への理解は避けられません。
そういった意味でも、循環器系以外の人にとっては、このあたりまでが無難なゴールでしょう。
『ER心電図の超速診断』
横長の本です。「超速診断」と書いてますが、別に速く読む読み方など全く書いていません。気をつけてください。
個人的に出会った初期研修医のなかで「この人は心電図を読めるな」って感じた人は皆この本を勧めてました。nが少なすぎるんでなんのエビデンスにもならないですが。
各章にテーマがあり、その心電図の説明、そして各章の後半にはその章の問題といった感じで、恐ろしいぐらいにベーシックな作りです。
ですが何故かお気に入りです。学生時代から何度も読んできました。理由は自分でもよくわかりません笑。カラーで美しいからですかね?
基本的に読み方を身につける本ではありませんので(一応軽く記載はあるのですが)、既に何かしらの読み方を身につけた人が手に取る本です(上級編ですしね)。
『心電図の読み方パーフェクトマニュアル』よりも実践(問題集)寄りって感じでしょうか。
『心電図の読み方パーフェクトマニュアル』
心電図の本と言えば真っ先に名前があがる本じゃないでしょうか。
ですが、初学者が手に取ると間違いなく挫折します。
上記『ER心電図の超速診断』と同じく教科書調となっています。作りも似たようなもんです。
ただ、こちらの方が一貫した読み方を身につけるような記載方法になっています(すんごい細かい読み方ですが)。
既に自分なりに読み方ができており、それとあまり相容れなかったので僕は『ER心電図の超速診断』の方を使っていましたが、それは恐ろしいほど個人的な意見ですので、どちらを使用しても大丈夫です。
『判読ER心電図』
ひたすら症例と心電図を読んでいくための問題集です。
基礎編と応用編とありますが、そこまでレベルに差はありません。
あと、この本に見られる特別な読み方がある訳ではないですので、どの本で勉強した人でも問題なく利用できます。
もはやこのレベルになると問題を解いて、わからないところは教科書で確認が一番です。
僕は初期研修医1年目が終わる頃に基礎編がほとんど解けるようになり、「心電図はもう大丈夫だ」と感じるようになりました。
心電図に自信のある人は本書で最初からゴリゴリ問題を解くのが一番早いかもしれません。
最後に
先にも述べたように、ここの本を超えるレベルの本になるともう循環器系へ進む人のための本です。
自分なりに好きな本や目的があって本を探すでしょうから僕のおすすめなど必要ないでしょう。
心電図は何よりも怯まないようにすることがまず第一です。
あとは学んだ型を問題集で定期的に解く。それしかないです。
根気が必要です。
近道はないです。
地道にやっていきましょう。