
今回はICU関連の本を紹介していきます。
ICUは全員が回るわけではないと思いますが、研修病院に設備があれば、やる気のある2年目とかは選択するんじゃないでしょうか。
さすがに重症患者さんが多いため初期研修医の裁量権は少なく、上級医が言ったことをやっていくスタイルに近い研修になってしまうかもしれません。
それでも、言われたことをただやるのと内容を把握してやるのとでは、外から見て同じようなことをしていても身につく内容が大幅に違ってきます。
A-lineやCVなどどうしても手技に魅力を感じてしまう人も多いでしょうが、ICUは生理学や病態生理を学ぶ材料が溢れています。ICU関連は自ずとそういった類の本も多いですよね。
基礎医学と臨床がつながっていることを実感できるのがICUの魅力ではないでしょうか。
ICUでそういったことを勉強してからまた救急外来をやると違った視点を持つことができますよ。
『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』
ICUで行なっていることと、生理学・病態生理を繋いでくれる良書です。
基礎医学と臨床がつながっていることを実感できるのがICUの魅力と先に書きましたが、まさにそれを教えてくれる本です。
基礎医学で生理学を学んだ後に臨床講義に入ると、基礎医学なんていったいなんの役に立つのか、と思っていた方もたくさんいたと思います。
その生理学の知識を背景に臨床への繋げ方を教えてくれます。
下記『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』の循環器の章でも循環の生理学についての記載がありますが、循環の生理学のみに絞っただけあって、こちらの方が深くかつわかりやすいです(カラーで見やすいですし)。
ICUがICUたる所以はBとCに異常があるからで(Aに関しては問題があれば挿管されますのでここでは省きます)、そのCをどうすれば良いのかを語ってくれています。
この本を読むことで上級医の先生たちがやろうとしていることがよくわかります。
循環をoxygen deliveryとperfusionの二つに分け、それらを検討していきます。
生理学と言われると難しい印象を抱くかと思いますが、本書は非常にわかりやすく書かれており、おそらく医学生の方でも読めるかと思います。
ICUや循環器内科へ進まれる方は必読本に近いでしょう。
臨床が楽しくなる、医学って面白い、と思わさせてくれる一冊です。


『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』
内容的に重い本の紹介で申し訳ない。ですが、ICUを体型的に学ぼうとするとどうしてもそうなってしまうのです。
優しめに書かれた本でも結局分冊になっていて、全部購入すると似たような分量になったりしますしね。
題名は『薬の使い方、考え方』となっていますが、薬以外のICU関連の一般的知識もこの本で十分身につきます。
どうしてもパッと見の分厚さから通読は難しいのではないかと思ってしまいますが、本家『ICUブック』と同じく、各ページの文章量はそこまで多くないので、1ヶ月もあれば十分通読は可能です(もちろん通読しろと言っているわけではありません)。
一人の著者が書いているので、一貫性があって読みやすいのもいいですね。著者は生理学や薬理学が重要だと本書の中で言っていますが、そういったことが意識されている作りになっています。
ICUではby system(要は臓器毎)でのカルテ記載をすると思いますが、この本を参照しながら確認していくと、その患者さんの重要な点や気を配るところがわかってきます。
初期研修医でこの本をしっかり読み込めれば100点満点でしょう。


『Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療』
竜馬先生は人工呼吸器や血ガスの本など、生理学を絡めた集中治療系の本をたくさん書かれている先生です。どの本もわかりやすいと定評です。
僕は人工呼吸器の本を竜馬先生の本で勉強したのですが、かなりわかりやすくおすすめのものでした。
『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』を持っていたためこの本は購入しなかったのですが、呼吸編での人工呼吸の話などを読んでみるとやはりわかりやすく、これはおすすめと感じたためここで紹介しています。
おそらく集中治療を体系的に学びたいのであれば『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』の方がベストだと思いますが、集中治療でもメインとなるところをやさしく丁寧に勉強していきたいと思うのであれば本書っといった感じです。
とっつきやすさは『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』よりも圧倒的にこちらですね。救急や集中治療に興味がある医学生にもすすめられるものとなってます。
内容は最近はやり(?)の、会話形式から導入してそこから説明に入るというものとなっています。
欠点をあげるとすれば分冊になっているというところでしょうか。
この分野で研修医向けのものは取り扱っている内容は大体同じです(重要なところは決まってます)。たくさん買う必要はありません。自分に合うものをしっかりと勉強しましょう。


『ICUブック』
青色の本です。いわゆる「本家」ですね。『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』の著者がこの本にinspireされたのかどうかは知りませんが笑
世界的に有名な本ですね。ICUの本と言えばまず名前があがる本です。
マニュアル的な感じの本というより(体裁もそうですが)、机の上に置いて病態生理をじっくり学ぶ本です。
『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』は薬剤量などの記載はしっかりありますが、この本はその辺は薄いです。まあ目的が違うからなんですが。
この本も結局通読したのですが、なるほど、なるほど、ICUやCCUの先生たちがこの本をおすすめしてくる理由がよくわかります。
あまり深くエビデンスなどを考えずにやっていたことに対してメスを入れてくれます。当然と思っていたことが全くエビデンスのないことであったり、今まで意味を考えずにやっていたことに意味を与えてくれます。
パラダイムシフトではないですが、こう、今まで当たり前だと思っていた事に「本当にそうかい?」と突っ込んでくれる本はいいですね。個人的に大好きです(医学書以外でも)。
上記の『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』や下記の『循環とはなにか?虜になる循環の生理学』の生理学的な話をICUの全範囲にわたって、しかも深く、そしてエビデンスと共に説明してくれている本って感じです。
「基礎医学と臨床がつながっていることを実感できるのがICUの魅力」と言いましたが、それを実感されてくれるものとなっています。
骨太の一冊ですが、やる気のある人は是非!


『リトルICUブック』
その名前の通り、『ICUブック』をコンパクトサイズにしたものです。
「通読が厳しかろうと、このサイズにしてみた」的なことを序文に書いてますが、この本を通読するのも結構大変じゃないかと思ってしまうのですが、みなさんの意見はどうでしょう笑
ちなみにどうでも良いことですが、この本の表紙と各ページの紙質が大好きです。
本家『ICUブック』より後に出版されており、内容はこちらの方が新しいです。
ところどころに『ICUブック』からの記載が見られますが、一応マニュアル的な体裁になっているためか、内容・趣旨は多少異なって本家よりも臨床寄りになっています。
『ICUブック』の雰囲気は感じたいが『ICUブック』を購入するには
値段が高い、そこまでは読めない、情報的に新しいものが欲しい
って人にうってつけだと思います。


『集中治療, ここだけの話』
ICUってその性質上、どうしても議論が残るところが多いですが、その部分の疑問に答えてくれる本となっています。
色々な比較試験などがなされてきていますが、その背景や試験結果などを記載してくれているため、論文を読まなくとも本書を開くことで大まかな方向がわるようになります。
実は『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』でも要所要所にその話を入れてくれているため、実はここに書いてあることは大体載っていたりします。
ですが、『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』はどちらかと言えば通読向きの本なので、調べるときは本書の方が調べやすく、またより詳しく比較試験の結果などを知ることができます。
ICUでやられていることのエビデンスがどうなっているかを調べたいと思った時はこの本を検討してみてはどうでしょうか。
ICUに興味がある人は両方持っていてもいいと思います。


『重症患者管理マニュアル』
ICU一般に関してのマニュアル本です。
『ICU/CCUの薬の使い方、考え方』に方向は似ていますね。それをマニュアル的にしたものです。
箇条書きにされている本が好きな人はこちらの方が読みやすいでしょう。また、探しやすいと思います。
ちょっとマニュアル感があり、読んでいて楽しいと思える本ではなかったです(まあ、そういった類の本ではないのですが)。
どちらかというと、「使える」にフォーカスした本といったところでしょうか。
ICUは生理学が臨床につながるところが醍醐味だと思っているので、上にあげた本たちの方が好きなんですが、目的が違いますし、全員が通読できるタイプって訳ではないですし。
マニュアル系は自分に合うかどうかが何よりも重要だと考えていますので、一度自分で手にとって目的に合うか確認してください。


『ICUレジデントブック』
こちらも『レジデントブック』なのでマニュアル本です。
『重症患者管理マニュアル』はマニュアル本ではあるものの本のサイズが大きく持ち運びは不可ですが、こちらは持ち運び可能なサイズです。
人工呼吸器や栄養のことなども含めてICUで必要なことは一通り書かれてあります。
『重症患者管理マニュアル』よりも「読ませる」書き方になっているため読みやすいです。
医学生におすすめするなら断然こちらですね。
初期研修医の先生で、「救急・ICUにそこまで興味はないが、素養として勉強しておきたい」と言われればこの本をおすすめします。


『INTENSIVIST』
集中治療では有名な雑誌です。おそらく医局にもあるはずです。
『集中治療, ここだけの話』はこの雑誌を体系的にまとめた感じでしょうか。
研修医でこの雑誌をいくつも買って読むって人はさすがにそこまでいないでしょう。
号によってテーマが違うので、少し詳しく勉強してみたい項目があれば、該当号を買ってみるのはありかと思います(僕もそういう使い方をしてます)。
一通り学んだ後の次のステップに使う本、と思っていただければ大丈夫です。
将来ICU志望でもうちょっと深くやってみたい人や、集中治療の項目で深く学びたいものがあれば、本雑誌を検討してみてください。
内科医志望の方も、該当科の項目のとき(消化器内科であれば肝不全とか)は診療しうるので買ってみてもいいかと思います。
救急に関してはこちらをご覧ください。