研修医おすすめ本 -救急編②-

前回は①として救急外来一般についての本を紹介しました。

今回は②として、救急外来で出会う症候についての本や、その他紹介しきれなかったけど救急外来の現場で役立つ本を中心に紹介していきます。

『ブラッシュアップ急性腹症』

急性腹症のみを扱った本です。

救急外来では腹痛の患者さんは本当に多く来院されますが、びっくりするほど診断がつきません

たかが腹痛、されど腹痛です。

鑑別にあげなければいけない疾患が多いことがその理由でしょう。

外科系・内科系の腹痛をはじめ、血管系もあり、腎・泌尿器系もあり、婦人科系疾患もあり etc…

とまあ、本当にたくさんあります。そのため、ピットフォールも山ほどあります。

救急一般について書かれた本では、もちろん腹痛についての記載はあるんですが、その内容の多さからどうしてもさらっとしたものになってしまいます。

そこで本書の登場です。

腹痛のみを本書を購入して読むのは気が引けるかもしれません。しかし、腹痛を甘く見ていると必ず足元をすくわれます

腹痛がきたら何でもかんでも造影CTってわけにもいかないでしょう。今後やるかもしれないバイト先でCTがいつでも撮れるとも限りません。

上部パンペリと下部パンペリの腹部の硬さの違いなどは読んでいて「へぇ〜」と感心していたら、実際に救急外来で両方の疾患を経験したのですが、確かに硬さが違い、「おおっ!」と思ったことがあります。

さすがに全員に「必須ですよ」とは言えませんが、救急外来で腹痛についてどうやって診断を進めていったらいいか悩んでいる方がいたら、一度本書を手に取ってみてください。

『外来で目をまわさない めまい診療シンプルアプローチ』

おそらくめまいが嫌いな研修医は多いんじゃないでしょうか。

めまいを詳しく勉強すると、「〜も否定しきれない」だの「〜の可能性もある」だの書かれています。

が、そんなこと言ってたらもはや全てが可能性として残ってしまいます。

疾患について言及しているようで結局は何も言っていないに等しく、そんなものは時間に追われる救急外来では大して役に立ちません。

そんな時にこの本が役立ちます。

「シンプルアプローチ」とあるように、間違いを恐れずできる限りシンプルに記載してくれています

やはりシンプルは美しいです。

ここに書かれてあることができれば、めまいに関しては100点満点です。

この内容から外れるものは専門科に任せてしまって大丈夫です。っていうか、おそらく専門科もコンサルトされると悩んでしまうと思います。

めまい診療にめまいを感じている研修医の救いとなってくれる本です。

『骨折ハンター』

救急科の先生が書かれた本です。

非整形外科医として、 “救急外来の現場ではここまでは知って(やって)おこう” という線引きをしてくれます。

個人的に、整形外科って学生時代に勉強した内容と現場で必要とされる知識が一番と言っていいほど開きがあるんじゃないかと感じています。

そして整形外科的な疾患を持つ患者さんは本当に多く、救急外来でもかなり来院されます。

特に骨折はみなさんが救急外来初日に出くわす可能性も十分あり、また他科でも最低限の知識や対応は必要です。

臨床の現場では疾患の頻度が重要ですが、この本は頻度に関しても言及してくれているため病歴を聞いただけて「この骨折かな」と当たりをつけられるようになります。

また、意外と悩んでしまう骨折でのシーネなどの当て方や、X線のオーダーの仕方(一覧表)も書いてくれているため、骨折に関しては非整形外科医としてやらなければいけないことは一通りできるようになります

さらに大切な点として、dispositionはどうなるかの言及があります。これは医学生にはない発想ですが、救急外来の現場では重要です。

整形外科医を深夜でも叩き起こして手術してもらわないといけないのか、それとも帰宅して大丈夫なのか・・・

かなり頭を悩ませる問題なのですが、ここまでわかるようになります。

かなり良書じゃないかと思います。著者は心電図に関しても本を出していますがこちらも素晴らしいです。心電図のおすすめ本をご覧ください。

『シーネ・ギプス固定の基本 虎の巻』

こちらは、シーネ・ギプス固定に関してがメインの本です。

YouTubeでの動画もついているのでわかりやすいですね。

固定の手技だけではなくて骨折に関しても載っているので、さっきの『骨折ハンター』が「詳しすぎて読んでられん!」って人には良いと思います。

『ERでの創処置』

まさかの羊土社のからの出版です。

羊土社といえば、初期研修医向けの本を出版していることが多いのですが、そこからこのような重厚な本が出版されるとは… どういった経緯なんですかね。

まあ、素晴らしい本なんでどこから出版されても嬉しいのですが笑

創処置の本としてはアメリカで有名な本です。それの翻訳版ですね。

縫合やちょっとした傷の手当ては医師たるものできるようにしたい。そしてできるのであればエビデンスを持って処置したい。そういった人向けです。

ちょっとお値段が張りますが、救急科志望や総合診療科志望は持っておいて損はしない本です。

『レジデントのための心エコー教室』

救急心エコーの決定版が出ましたね。救急外来での心エコーを学びたいなら間違いなくコレ一択です

救急外来では心エコーにしろ腹部エコーにしろ、ある程度は身につけておく方がいいのは間違いないです。特に心エコーは救急外来以外でも術前スクリーニングでやられることがあるので、それを見る目を養うこともできます。

僕は “ほどほどに” 心エコーが好きで、心エコー関連の本をこれまで結構探してきたのですがしっくりくるものがなかなかありませんでした。

ベッドサイドでの簡易エコー検査の重要性は叫ばれているので、それ用のめちゃくちゃ簡単なもの(腹部エコーまで含めて総合的なもの)はあるのですが、それ以外だと循環器医師用・検査技師用の難しい(詳しすぎる)もの、と二極化していたのです。

そこにきてようやく本書です。本書は間違いなく名前の通りレジデント向けです。エコーを初めてやる人向けです。そして、かつほどほどに詳しく書かれています。

ほどほどに詳しくの程度はどのくらいかというと、循環器系に進む予定の研修医であれば必須の知識、救急やICUに進むつもりの人・興味がある人で、ただただ心エコーをあてるだけでなく、もう少し詳しく学んでおきたい人にピッタリな難易度となっています

『レジデントのための』としては、絶妙な設定です。素晴らしい。

初めの項目はモードの説明やアプローチなどの心エコーの一般的な説明、そして拡張障害と収縮障害で見るべきポイント、最後に救急外来に出会うであろう疾患の心エコーを絡めた説明となっています。

いやー、研修医向けの心エコー本としては間違いなく100点満点ですね

循環器系以外に進む初期研修医が救急外来でここまで心エコーを見れたらカッコいいですよ。

以下も参考にしていただければと思います。

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