今回は研修医になったらまず買うべきと思える本で、特に病棟管理や内科マニュアル本をメインにいくつか紹介していこうと思います。
もちろん他にも「この本はmust-buy だろう」と思う本はいくつかあるのですが、ここではジャンル的に病棟管理系・医師一般系の本を中心にして紹介します。
ちなみに、下の記事も初期研修が始まったばっかりの人にはかなりおすすめの本を紹介してますので、参考にしてください。
病棟管理本
『内科レジデントの鉄則』
この項目のど本命です。かなり有名な本ですので知っている人もいるでしょう。
僕は学生の4年生の時に第2版を買って読んでいたのですが、6年生の時に第3版が出版され、改訂でかなり読みやすくなっおり買い直しました。
研修医は購入必須と言っていいほどの本です。
内科に進まない人がここに書いてあることを実践できているなら間違いなく “デキレジ” です。
っていうか、内科を専攻する(している)研修医(専攻医)でも、自分が進む診療科以外の科のことも含めてここに書かれていることをきっちり実践できているという人にほとんど出会いません。
専攻医以降になると、もはや専門外は他科へぶん投げる人がかなり多いです。
個人的に初期研修医の目標はここに書かれてあることを一人で実践できることだと考えています。
あれやこれやと様々な本に手を出して結局何も身に付かなくなるぐらいなら、この本の内容を身につけることに専念する方が圧倒的に有益でしょう。それぐらいの完成度です。
『総合内科病棟マニュアル』赤本・青本
一言でいえば和製ワシントンマニュアルですね。これ1冊で病棟のことに関しては大体のことは片付きます。
マニュアルと言いつつもかなり分厚いので、サイズ的には白衣に入るものの持ち運びには向いていないため、この「病棟管理本」に含めました。
薬剤も商品名で記載されているので参考にしやすいです。研修しだすとわかるのですが、一般名よりも具体的に商品名で書いてある方が参照しやすいのです。
下で紹介する『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』よりも詳しくなさすぎず、マニュアルの体裁を残していてとっつきがいいので、将来内科以外に進むつもりの人で内科病棟管理の本を1冊欲しいのならコレがベストだと思います。
また、将来内科に進むつもりの人で『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』はちょっと難しいと感じる人にもちょうど良いと思います。研修が始まったばっかりの初期研修医にも程よいですね。
P.S.
この記事を最初に書いていた頃には「amazonでも評判がいいですし、そのうち改訂されそうですね。」なんて言っていたのですが、実際に改訂されましたね。
分厚くなるんだろうなぁって思ってはいたのですが、総論・各論の2冊構成になりましたね。僕も早速買いなおしました。
『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』
上記2冊と比較すると難し目の本ですのでおすすめにするか悩んだのですが、素晴らしい本なので紹介です。
内容としては、診療をしていると結構な疑問が出てくるのですが、それに豊富なエビデンスをもとに答えてくれる本となっています。
論文をまとめた感じに近いので、英語を読むのが苦手な人でも最新に近い情報(エビデンス)を得ることができます。
もともとは総合内科医や一般内科医向けがこの本のスタートだったはずですが、もはや詳しく書きすぎて専攻医レベルのことが書いてあります。
総合内科医を専攻予定の人や、内科を専攻し他科の内科疾患の知識を深く学びたい人にはうってつけの本だと思います。
最初は無理せず上記2冊から入って、病棟業務に慣れてきてさらにもっと深く学びたいと感じたときに本書を手に取ってもらうと良いと思います。どちらかというと意識高い人向けですかね。
『ワシントンマニュアル』
『総合内科病棟マニュアル』は和製ワシントンマニュアルって言いましたが、「『ワシントンマニュアル』って何よ」って人もいるでしょう。
こちらも1冊で病棟のことが大体できるようになっている病棟マニュアルです。
というか、『総合内科病棟マニュアル』が『ワシントンマニュアル』を意識して作られたものです(多分)。
病棟マニュアルの類では、アメリカの出版物の中で日本で一番有名な本じゃないでしょうか。
日本語に和訳されるため海外の最新版とタイムラグがあることと、doseが海外基準となっていたり、日本では保険適応がないものがあったり、日本とアメリカでは疾患の頻度・有病率が違うためこっちだとメジャーの疾患でも扱いが小さいものがあること、etc…が欠点でしょう。
まあこの辺は『ワシントンマニュアル』の欠点というより、洋書の欠点ですね。
それを踏まえても間違いなく良い本ですし、比較のために1冊持っていてもいいと思います。個人的には一番好きなマニュアル本です。
外来版など姉妹本がたくさんあるので、購入する際は間違えないように注意してください。
内科マニュアル
マニュアル本は内科一般以外にも各科に別れたものが本当にたくさん販売されています。医学書院から出版されている『レジデントマニュアル』シリーズが一番有名でしょう。
個人的に、マニュアル本は使うかどうかが一番大事大事ですので、他人のおすすめよりも自分にしっくりとくるものを選ぶ方が大事だと思ってます。
かといって、それを見つけるのも簡単ではありません。「とりあえずビール」と同じく「とりあえず有名なものを」という意見ももっともだと思います。実際に有名なものは良書が多いですしね。
なので、有名な本を中心に紹介します。
くくりとしては同じ「内科マニュアル本」になるのですが、意外と内容というか対象としている読者層が違っていたりします。自分が欲しいのはどういうものかを明確にしてから購入するようにしてください。
『内科レジデントマニュアル』
『内科レジデントの鉄則』は白衣のポケットに入れて持ち運べるサイズではありません。
そういったマニュアルが欲しいのであれば、同じく聖路加病院の姉妹本である『内科レジデントマニュアル』がおすすめです。医学書院から出版されている『レジデントマニュアル』シリーズの一冊です。
マニュアルにしたためか、内容は若干『内科レジデントの鉄則』とは違っています。便秘薬に関してなど、こちらにしか記載がないものもあります。
内容はやや総論寄り・内科病棟管理寄りといった感じです。各論で扱っている項目はそこまで多くありませんが、便秘やせん妄など、病棟業務ではよく出会うことはしっかりと書かれています。
研修医は購入必須にとも言える『内科レジデントの鉄則』との連携のしやすさや一貫性があるのが一番の利点ですね。
机上では『内科レジデントの鉄則』を勉強しつつ、病棟に出る際には白衣に『内科レジデントマニュアル』を忍ばせて業務に励む。これであなたも聖路加病院レジデントの一員?!笑
聖路加病院の教育を垣間みることができます。
『内科レジデント実践マニュアル』
こちらも研修病院として有名な(最近は少し人気が落ちているらしいですが)三井記念病院の内科マニュアル本です。
内容としては、『内科レジデントマニュアル』よりも各論がしっかりと書かれています。各論で扱っている疾患は『内科レジデントマニュアル』と『総合内科マニュアル』より多いです。
イメージとしては『ワシントンマニュアル』を白衣に入れれるサイズに要約した感じでしょうか。
内科各科の疾患をある程度きちんと押さえてあるマニュアル本が欲しいのであればコレになるでしょう。
『総合内科マニュアル』
こちらも研修病院として有名ですね。亀田総合病院のマニュアル本です。
『総合内科マニュアル』と題しているだけあって、上記2冊と比べて総論寄りで射程範囲も広いです。目次を見てもらえればわかりますが、病歴聴取や身体所見、カルテの書き方から救急外来の原則、在宅診療の原則、緩和疼痛の原則、そして疾患各論まであります。
特徴として感染症の項目がかなりしっかりと書かれています。項目の中で一番ページ数が割かれています。亀田総合病院といえば、神戸大学の感染症内科教授である岩田先生が働いていた病院ですし、病院として感染症をしっかりやるという土台があるのでしょう。
疾患各論よりも、内科医・総合内科医そしての素養を鍛えたいと考えている人に合う感じでしょうか。
『UCSFに学ぶ できる内科医への近道』
著者の山中先生は医学生向けの著書をいくつも出版されていますね。総合診療・医学教育で有名な先生です。
扱っている内科疾患の項目を見ればわかるように、病棟管理寄り・総合内科寄りのマニュアルです。疫学もきちんと記載があるのもありがたい。
本書の特徴としては、頻用薬剤比較表や持続投与量早見表、そして疾患別問題集が載っていることでしょう。特に薬関連は結構役立ちます。
個人的にはマニュアル本の中で一番好きなんですが、比較的古いのがネックですね。改訂してくれないかなぁ。
『内科ポケットレファランス』
『ワシントンマニュアル』の説明で「アメリカの出版物の中で日本で一番有名な本」とちょっとややこしい言い方をしました。
というのも、アメリカではこちらの原著『Pocket Medicine』の方が有名(人気)だからです。
この記載時点で簡単に比較すると、ともに2019年出版ながらアメリカのAmazonでは『Pocket Medicine』が970レビュー、『The Washington Manual of Therapeutics Paperback』が357レビューとなっています(評判は同じような感じです)。
記載されている情報量もこちらの方が多いです。しかもこっちの方が薄い。ということなので、文字の羅列っぽくなってます。しかも字が小さい。
イメージとしては、『イヤーノート』を内科マニュアル化したもの、という感じでしょうか。
こちらも『救急ポケットレファランス』などいくつか種類が出ています。
使いこなしていくとその良さがわかるらしいのですが、僕は羅列気味なのがどうも苦手で購入したことがなく、『ワシントンマニュアル』派でした(ただ、両者の目的は違いますが)。『イヤーノート』は医学生時代に使い倒したんですけどね。もしかしたら、使ってみると意外と自分に合うのではと思ってみたり。
とか言っていたら、3月末に日本語版の改訂第3版が出版されました。この版では従来よりも文字を大きくなっていますが、その代わりにサイズは変わらないもののページ数は大幅に増えてます。
今まで食わず嫌いをしていましたが、改訂されるのをキッカケに購入してみたのですが、思っていた通り白衣のポケットに入れられる『イヤーノート』って感じです。
『イヤーノート』も使っていくごとに使い勝手が良くなっていく本ですが、こちらもそうですね。やはりこれだけの情報量をさっと調べられるのは重宝します。
手技関連
『診療と手技がみえる vol.2』
ここでも出ました。泣く子も黙るメディックメディア様です。vol.1は持っている人もいるでしょう。
初期研修医で必要であろう手技に関してはある程度網羅されています。
手技に関しては「実際に見て・やって」なんぼのものなんですが、 “モノ” の準備も大事でして、その際に参考になります。
内容が少し古いのが難点なんですが(手技本なんで基本そこまで欠点にはならないんですけど)、そのうち改訂されるでしょう(というかしてくれ)。
『みえる』シリーズであるため馴染みもありますし、現時点では無難な選択肢です。改訂されればおそらく一番勧められる本になるでしょう。
『ねじ子のヒミツ手技』
シリーズで3冊発売されています。
看護師さん・研修医向けに書かれたものだけあり、圧倒的に読みやすいです。絵は実際のものではなくて、マンガになっています。
こんな見た目(?)ですが、しっかり説明されていて、著者の方が研修医がつまづきそうなところを熟知していることもあり研修医が疑問を持ちそうなことにきちんと答えてくれています。
研修医だけではなく、実習に出た医学生にもピッタリだと思います。
『一気に上級者になるための麻酔科のテクニック』
名前はcatchyですが、しっかりとした手技に関する本です。
ルート確保などの記載もあります。しかもいろんなパターンに関して書かれています。
ルート確保は研修医になったらほとんどの人が経験する手技です。もちろん最初のうちは数をこなさいとどうしようもありません。
数をこなしていくうちに基本的にルート確保できるようになってくるのですが、その時期を過ぎてさらに慣れてくると、一度なぜかルート確保できない時期がやってきます(多分)。僕はその時に参考にしました(もちろん他の項目も読みましたよ)。
手技がもう一段上手になりたいあなたにピッタリの本です。
その他
『他科コンサルト実践マニュアル』
僕は初期研修でローテートをしていく中で身につけるべき目標の一つに「適切にコンサルトをできるようになること」があると思っています。
本書はまさしくそれを身につけるための本です。
編集にブログでも有名な佐藤弘明先生がいますね。このブログでも先生の著書をいくつかあげてます。
個人的に他科コンサルトは結構難しいと思っています。ある程度のことがわかっていないと他科へ丸投げ状態になりますし、かと言って自分で何でもできると思っていると適切なタイミングをのがし、下手をすると重症化してしまうかもしれません。
コンサルト文を書くにも、きちんとわかっていないと冗長になってしまったり、逆に短すぎて情報不足になったりします。
その適切な度合いを知るのがローテートをやる一つの理由だと思ってるのですが、それを助けてくれるのが本書ですね。
各科の先生に本音を尋ねてそれを記載してくれているので、コンサルトする上で非常に役に立ちます。
個人的に『内科レジデントの鉄則』と同様、初期研修医必須本だと感じてます。
『「型」が身につくカルテの書き方』
医師になると毎日のように記載しなければならないのがカルテ。ちなみにカルテは公文書です。
カルテ記載の基本であるSOAPという言葉は医師国家試験でもよく聞くものの、大学では実際の記載方法を習うようで習わなかったんじゃないでしょうか。そんなカルテの書き方について書かれた本です。
最近はカルテを丁寧に記載する研修医が多いような気がしますが、この本のおかげなんでしょうか。
著者の方は最初は看護師さんがひく程の長さのカルテを書いていたみたいですが、試行錯誤して至った結論をこの本で紹介してくれています。
カルテをしっかり記載するのには時間がかかりますが、患者さんの病態を理解・整理するいい機会になります。また、何をすべきか(したか)も残しておけます。
カルテの最終的な書き方は専攻する科などによってオリジナルにしていけばいいと個人的には思っていますが、初期研修の頃に一度しっかりとした型を身につけるのは大事でしょう。
その際に参考にしてください。