本日の話題ももなかなか正解が出ないものですね。
研修先の病院を激務系にするかハイポ系にするか。どっちにもメリットがあり、そしてデメリットもあります。
結局どっちを選ぶかは本人の考え方次第ですが、近年の流れはハイポよりですかね。
「人生一度きり。仕事だけが全てではない。」
個人的にも思考はどちらかというとこっち寄りです。自分の時間が何よりも大切だと思う人です(こういったブログをできるのも自分の時間があってこそです)。
ただ、せっかくなので、そういった視点だけではなく “有意義に研修を行うにはどっちがいいか” の視点からも僕の意見を述べてみようと思います。
激務病院
メリット
なんといっても “体で覚えられる” この一言に尽きるでしょう。
僕は教科書をよく読むのですが、やはり一度その疾患を生で体験してからその項目を読むのと、経験のないままその項目を読むのとでは雲泥の差があります。
本当に圧倒的な差があります。
そしてその後にしっかりと記憶されるのは間違いなく前者です。
初期研修の2年間、経験し勉強するということを繰り返していると、おそらくハイポ病院で勉強せずに遊び呆けていた人とを比較すると、もはや逆転できなほどの差がつくはずです。
そして、学生時代にあまり勉強してこなかった人も初期研修の2年間で逆転できる可能性も出てきます。できレジの仲間入りです。
時間外手当がつく病院ならば、給料もよくなるというメリットもついてきます笑
ちなみに、時間外手当の有無はきちんと確認しておいた方がいいですよ。僕は1年目は包括的に時間外手当が含まれている病院でしたので、遅くまで働けば働くほど時給が落ちていくことになるため、残念ながら時間外を頑張ろうという気持ちになりませんでした。
デメリット
経験と(おそらく)給料、この二つが手に入る激務病院。じゃあ、そのデメリットは何か。
まず最初にあがるのが鬱です笑
笑ってますが、割とマジです。1年目の4月はわからないことだらけでどうしても効率が悪くなってしますのですが、僕はその4月が割と忙しい科であったこともあり、4月は80時間オーバーぐらいの残業時間でした。
そうなると、どうなるか。
月に80時間以上の残業は鬱になりやすいと聞いてはいたのですが、アレ、本当ですよ。特に仕事に慣れていない時期は危険です。鬱まではいかなくともかなり仕事が嫌になってました。
あれに人間関係がつんでいたら間違いなく鬱になっていたと思います(いい先生たちでよかった)。しかも給料面では報われない。
体力面や精神面に自信がない人は気をつけてください。
次にあるデメリットは “得られる経験が有意義であるものとは限らない” です。
さっき4月は割と忙しい科であったと言いましたが、じゃあなぜ忙しいかというと、要は雑務が多いわけです。
初期研修医は前にも言ったように病院のヒエラルキーの最下層です。本当に雑務が湧いてきます。ルート確保、採血、同意書の取得 etc…
受け持ち患者さんが多くなるとこの辺の雑務をこなすだけで結構な時間が取られます。じゃあ、その分何か成長したのかと問われると、まあ成長していないでしょう笑(最初のうちは手技の経験にはなるでしょうが)
この辺を一生懸命やったところで医学・医療の勉強や経験にはなっていません。激務病院で経験できるといってもその内容が大事なわけです。
そして、激務病院にありがちなのが、「上級医のフィードバックが得られないことが多い」です(上級医が忙しいから初期研修医も忙しくなっていることが多いので)。
それではやっているだけで、本当にできているのかがあやしくなります。この「やっている」と「できている」の区別ができないと、「やっている=できている=俺すごい」の構図ができてしまします。しかも、激務病院はなにかと有名病院が多いですからプライドまでついてくると本当に厄介です。
メリットのところで「学生時代にあまり勉強してこなかった人も初期研修の2年間で逆転できる可能性も出てきます。できレジの仲間入りです。」と言いましたが、実は半分以上は嘘です。
学生時代にあまり勉強していなかった人が激務病院に行ったとしても、業務はこなしていても、それからさらに時間を割いて勉強できる人はほとんどいません(それができているなら学生時代からコツコツと勉強しているからです)。
「仕事やりながら勉強すればいいじゃん」と思うかもしれませんが、仕事をしだすと本当に自分の時間が取れません。勉強する時間すら取れません。
結局、「やっているだけ」で終わることが多いです。
確かにそれでもハイポ病院に行って何もしないよりかはマシかもしれませんが、真の “できレジ” と呼ばれる人とは程遠いです。
経験することに意味があるのは、その経験を生かせるほどの背景の知識があってこそです。
学生時代の時に勉強をあまりしてこなかった体育会系の人が伸びる印象の激務病院ですが、個人的に、学生時代からしっかりと勉強してきた人の方が向くと思ってます(体力に自信があることが前提ですが)。
ハイポ病院
メリット
なんと言っても “自分の時間が持てる” ことでしょう。
自分の時間があるというのは本当に応用が効きます。遊びに使うもよし、勉強するのもよし。
個人的に初期研修はこちらの方が大多数の人向けなんじゃないかと思います。だからこそ、最近はどちらかというとハイポ(といかないまでも、割と時間に余裕のある)病院の方が人気があるのでしょう。
ある程度時間に余裕があると、業務時間内に医学の勉強も可能で、そうなると業務終了後は本当に自分の趣味に時間が当てられます。家族持ちでしたら家族との時間に使えますね。
また、時間に余裕があるので先生たちも優しい人が多い気がします(注:個人の感想です笑)。そうなるとフィードバックもあったりします。
コツコツと勉強できる人であれば、うまくやれれば激務病院よりも効率よく経験することができる可能性があります。
デメリット
やはり経験が乏しくなることでしょう。
経験が少ないままある程度任せられる専攻医になるのは結構辛いものがあると思います。
特に初期研修していた病院とは違う病院に務めることになった際に、「専攻医なんだからこれくらいはできるだろう」と説明もないまま振られることもあるでしょう。しかも何故だか専攻医になると突然質問しにくくなります。
そして、もう一つの欠点は楽な方に流されやすいことです。
自分の時間があることは応用が効きます。ここで勉強できる人であれば、うまくいけば激務病院よりも有意義に研修ができる可能性があります。が、意思の弱い人だとおそらく勉強しないまま流されて終わるでしょう。
やはりハイポ寄りになればなるほど、ガツガツした人はいなくなります。勉強する人の割合も減ってきます。その流れに乗ってしまうと、本当に何も身に付かないまま終わってしまう可能性すらあります。
まとめ
本当に激務病院とハイポ病院というザックリとした分け方で述べてきました。
実際は激務病院の中にハイポな科があり、ハイポ病院の中に激務な科があったりする訳ですから、こんな簡単に分けられるものではありません。
逆に言えばそこをうまく利用できれば、さらに効率よく勉強できる可能性も秘めています。
病院全体としてはハイポ病院を選びつつ、将来自分が進む診療科はハイパー寄りの病院を選択して経験もある程度担保しておく、などです。
これから病院見学のシーズンですね(コロナ禍でそれどころではなくなっていますが)。
多少なりとも見学する際の参考にしてもらえればと思います。